リサイクル法を解説|缶・段ボール・家電などの分類から処分方法まで制定!

リサイクルできる瓶

地球上で人間が継続して社会生活を営む上で、無視できなくなった概念の一つ、リサイクル。
リサイクルそのものの重要性は理解していても、なぜリサイクルが必要なのか、深く考える機会は意外と少ないですよね。

リサイクルに関する法律は一口にまとめられるものではなく、適用されるジャンルはプラスチック容器・各種家電・食品など幅広いため、それぞれの分野で法律が分かれています。
日常生活に関連する分野ではリサイクルを意識していても、企業がどのような法令を根拠にリサイクルを実践しているのかについては、詳しく知らない人も多いのではないでしょうか。

この記事では、そもそもリサイクル法がなぜ必要なのかに触れた上で、リサイクル法の種類とともに、歴史を紐解きながら日本人の生活がどのように変わったのかをご紹介します。

リサイクル法とは

リサイクルマーク
リサイクル法について理解を深めるには、そもそもリサイクル法というのが何を目的とした法律なのか知っておくと、そこから派生する法律について理解を深めやすくなります。
以下に、リサイクル法の概要についてお伝えします。

正式名称は「再生資源の利用の促進に関する法律」

リサイクル法とはいわゆる略称であり、正式名称は1991年に制定された「再生資源の利用の促進に関する法律」です。
こちらが2000年に大幅に改定された結果、現在は「資源の有効な利用の促進に関する法律」へと改題されています。

法律の中では、再生資源の利用促進のための基本方針が定められており、生産・流通・消費の各段階で環境保全の観点に立った再資源化促進が課題となっています。
具体的には、以下の目的を達成し、循環型経済システムの構築を目指すための法律と言えます。

・事業者による製品の回収、リサイクルの実施といったリサイクル対策の強化
・製品の省資源化、長寿命化等による廃棄物の発生抑制
・回収した製品からの部品の再利用対策
・副産物の発生抑制、リサイクル促進

10業種・69品目が対象

リサイクル法は、10業種・69品目という非常に広範囲にわたる法律です。
この業種・品目数は、一般廃棄物及び産業廃棄物の約5割をカバーしています。
以下に、対象業種と、わたしたちの生活に直接的に関わる主な品目についてご紹介します。

特定省資源業種

古いクルマ 廃車
以下の業種の事業者は、副産物の発生抑制・再生資源としての利用促進に取り組むことが求められています。

・パルプ製造業及び紙製造業
・無機化学工業製品製造業(塩製造業を除く)及び有機化学工業製品製造業
・製鉄業及び製鋼、製鋼圧延業
・銅第一次製錬、精製業
・自動車製造業(原動機付自転車の製造業を含む)

紙や金属に関わる業種について、リサイクルに積極的な印象を持つ人も多いと思いますが、リサイクル法が一つの根拠となっていることが分かります。

特定再利用業種

以下の業種の事業者は、再生資源または再生部品の利用に取り組むことが求められています

・紙製造業
・ガラス容器製造業
・建設業
・硬質塩化ビニル製の管、菅継手の製造業
・複写機製造業

再生紙を使ったノートや、廃車の窓ガラスを再利用した再生ガラス容器など、身近なものでリサイクル製品を見かけることがあると思います。

指定省資源化製品

乾電池 山積み
以下の製品の製造事業者(自動車は製造・修理事業者)は、原材料等の使用の合理化、長期間の使用の促進、その他の使用済物品等の排出抑制に取り組むことが求められています。

・自動車
・家電製品(テレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、衣類乾燥機)
・パソコン
・ぱちんこ遊技機(回胴式遊技機を含む)
・金属製家具(金属製の収納家具、棚、事務用机及び回転いす)
・ガス、石油機器(石油ストーブ、ガスグリル付こんろ、ガス瞬間湯沸器、ガスバーナー付ふろがま、石油給湯器)

わたしたちの生活を便利にする家電や機器は、その多くがリサイクル法の対象物となっていることが分かります。

指定再利用促進製品

テレビ パソコン
以下の製品の製造事業者(自動車は製造・修理事業者)は、再生資源または再生部品の利用の促進、具体的には「リユースまたはリサイクルが容易な製品の設計・製造」に取り組むことが求められています。

・自動車
・家電製品(テレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、衣類乾燥機)
・パソコン
・ぱちんこ遊技機(回胴式遊技機を含む)
・複写機
・金属製家具(金属製の収納家具、棚、事務用机及び回転いす)
・ガス・石油機器(石油ストーブ、ガスグリル付こんろ、ガス瞬間湯沸器、ガスバーナー付ふろがま、石油給湯機)
・浴室ユニット、システムキッチン
・小形二次電池使用機器(電動工具、コードレスホン等の28品目)

素材や部品の再利用を前提としている製品としては、自動車がよく知られています。
公益財団法人自動車リサイクル促進センターの調査によると、重量で見た際の使用済自動車のリサイクル率は99%と言われています。

このほかにも、缶・ペットボトルの分別や、電池の再資源化などがリサイクル法によって求められています。

関連法は数多く生まれている

リサイクル法が適用される範囲は広いものの、資源・廃棄物の分別・再利用等を行うにあたり、業種や品目ごとに細かい取り決めが必要です。
そのため、日本では対象の種類ごとに、関連する法律が数多く生まれています。

エコタウン事業や使用済再生可能エネルギー設備の検討など、新しいニーズにともなう動きも見られ、将来的にリサイクル関連法は増加するものと予想されます。

日本にはどんなリサイクル法がある?

日本におけるリサイクル法の関連法は、日々の生活に関係するもの、間接的に関係するものなど様々です。
ここでは、特にわたしたちの生活に深く関係するものを中心に、主な関連法をいくつかご紹介します。
梱包 段ボール箱

容器包装リサイクル法

2020年は、新型コロナウイルスの影響から、オンラインショッピングの利用が激増しています。
この1年、多くの人が梱包アイテムを破棄することが増えたのではないでしょうか。

容器包装リサイクル法は、そういった「一般の家庭でごみとなって排出されるもの」をリサイクルする目的で作られた法律です。
梱包アイテムに関しては、段ボールや紙製容器包装などが該当します。
そのほか、アルミ缶・スチール缶・ガラスびんの分別や、ペットボトル・プラスチック製包装容器の分別に関しても、法律で詳しく定められています。

容器包装リサイクル法が制定された背景には、日本の成長において生まれた「大量生産・大量消費・大量廃棄」という負の連鎖が、廃棄物を処分できないところまで膨れ上がったしまったことがあげられます。
法律の制定・運用にともない、国民一人ひとりにリサイクルの意識が行き届いたことで、年を追うごとにリサイクル率は着実に増加しています。

家電リサイクル法

新しい冷蔵庫を購入する際に、古い冷蔵庫を回収してもらう場合、配達作業員の人に料金を支払った経験があると思います。
現代の日本では、特定の家電を買い替える際に古い家電を回収してもらう場合、別途リサイクル料金を支払う必要があります。

このルールを取り決めているのが家電リサイクル法で、具体的には以下の家電4品目が対象となります。

・家庭用エアコン
・テレビ(ブラウン管式、液晶式、プラズマ式)
・電気冷蔵庫、電気冷凍庫
・電気洗濯機、衣類乾燥機

なお、液晶式のテレビについては、電源として一次電池または蓄電池を使用しないものに限り、建築物に組み込むことができるように設計したものは除きます。

家電リサイクル法も、容器包装リサイクル法と似た事情から制定されており、その背景には廃家電製品からの有用資源(鉄・アルミ・ガラスなど)を回収すること、廃棄物最終処分場の状況がひっ迫していることがあげられます。
家電量販店などで新品を購入する場合、店舗側が古いものを回収する流れができているためスムーズですが、中古品を購入する場合などは別途回収を依頼しなければならない場合があります。

自動車リサイクル法

山積みタイヤ
2020年4月に緊急事態宣言が発令されてから、普段の足として使用するための低価格な中古車が売れている状況が見られました。
そこで、車を購入する際に「リサイクル預託金」について説明を受けた人もいると思います。
このリサイクル預託金の根拠となっている法律が、自動車リサイクル法
です。

自動車リサイクル法では、車の所有者(ユーザー)/関連事業者/自動車メーカー・輸入業者の三者が、それぞれの役割に応じて使用済自動車のリサイクル・適正な処理に携わることを義務付けています。
その中でユーザーは、シュレッダーダスト・エアバッグ・フロン類の処理にかかる費用を負担する義務があります。

かつても廃車は何らかの形でリサイクルはされてきましたが、どうしてもリサイクルが難しい・処理が難しい部品も存在しており、それらの適切な処理を行うために自動車リサイクル法が機能しています。
特に、フロン類の適切な処理がなされないと、地球温暖化・オゾン層破壊を引き起こすおそれがありますから、ユーザーの義務は重大なものと言ってよいでしょう。

食品リサイクル法

落ちたりんご
外食の際、提供された料理の量が多すぎて食べ切れなかった経験がある人も多いと思いますが、かつてこれらの食べ残しは利用されずに大量廃棄されていました。
食品リサイクル法は、そのような状況を改善するために制定された、食品に由来する食品廃棄物の有効活用と発生抑制を目的とした法律です。

食品関連事業者(レストラン・食品メーカー等)の排出した食品廃棄物は、再生利用事業者の手によって肥料や飼料となり、農林漁業者がそれらを利用して農畜水産物を食品関連事業者に提供します。
この一連のサイクルを定めたものが、食品リサイクル法です。

農林水産省の統計「平成29年度(2017年)食品循環資源の再生利用等実態調査」によると、肥料・飼料の原料となる有益な食品廃棄物の再生利用等実施率は、食品産業全体で84%という高い数値を記録しています。

わたしたち個人も、食べ残しを減らす・食品の買い過ぎを控える・食品の保存方法を学ぶなど、食品ロスを減らす観点からできることはたくさんあります。

リサイクル法がもたらした社会の変化

リサイクル法が施行されてから、日本社会もまた変化を受け入れざるを得ませんでした。
しかし、社会に生きる一人ひとりが「当事者」となったことで、リサイクルに対する考え方も年々変化しています。

廃棄物に対する企業や消費者の責任が明確化された

戦後から高度成長期にかけて、人々の所得は増加し、家電も急速に普及しました、
一方で、活発な生産活動は不適切な処理の廃棄物を自然へと垂れ流す結果となり、公害による住民の健康被害も甚大なものとなります。

そこから有害物質の排出規制・適切な処理の推進などが進められましたが、バブル期も消費は増大を続けたため、日本全体で最終処分場のキャパシティが限界を迎えてしまいました。
2000年を迎えると、既存の経済システムを見直す動きが生まれ、持続可能な社会の実現に向けて対策が進められるとともに、廃棄物に対する個人・企業の役割や責任が明確化されていきます。

エコバッグなど、個人でできる取り組みに注目が集まるようになった

マイボトル
個人の意識にもう少し目を向けてみると、一人ひとりが日々の生活で難なく取り組めることに注目が集まり始めます。
エコバッグに関しては、2020年7月1日にレジ袋の有料化が始まる前から、すでに自主的に購入・利用している例は多く見られました。

マイボトル・マイ箸などが人気となったように、ゴミを出さずに繰り返し使えるものを用意するのも、無理のない取り組みの一種です。
社会制度・リサイクル法の中で義務化されているわけではありませんが、それ以上に環境保護・持続可能な社会の実現に対して高く意識を持てることは、日本人ならではの美徳と言えるかもしれません。

「ゴミを拾う」ことさえも個人の責任に

自治体によっては、個人のゴミ拾いを奨励し、ボランティアゴミ袋を用意しているところもあります。
しかし、拾ったゴミのすべてが無条件で引き取ってもらえるわけではなく、場合によってはボランティアでゴミを拾っても無料収集の対象外となる場合があります。

例えば、テレビが近所に捨てられていて、廃棄した人が名乗り出ないと、最悪の場合住民が自費で処分しなければならない可能性があるのです。
現代では、特定のゴミを拾うことさえも個人の責任となるレベルまで、ゴミ処理のルールがシビアになっている一面は否めません。

この点については、最初に捨てた人間が悪いのは当然ですが、ゴミの処分を他者に転嫁させることのないよう、国・自治体の積極的な関与が望まれます。

おわりに

リサイクル法の施行によって、わたしたちは持続可能な社会の実現を意識した暮らしを、いつしか無意識のうちに行うようになりました。
ペットボトルや空き缶の分別、自動車を購入する際のリサイクル預託金、マイバッグを持参しての買い物など、かつて目新しかったルールは社会に広く浸透しています。

だからこそ、モノを処分する際は、正しい知識にもとづいた行動が必要です。
ルールを知り、適切に処分することが、わたしたち一人ひとりの暮らしを豊かにするためのマナーと言えるでしょう。

参考にしたページ

廃棄物・リサイクル対策|環境省
家電4品目の「正しい処分」早わかり!|経済産業省
リサイクル法とは|コトバンク
資源の有効な利用の促進に関する法律|e-gov法令検索


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