LIXIL「ATMO」の誕生秘話 〜玄関空間に溶け込む、宅配ボックスの新たなカタチ〜
株式会社LIXILが開発した宅配ボックス「ATMO(アトモ)」。簡単にドアに後付けでき、様々なデザインの玄関空間にも馴染むのが特徴で、中に置き配バッグ「OKIPPA」が収容されています。
2021年2月にクラウドファンディングの仕組みを活用した応援購入サービス「Makuake」にてテスト販売された際には、目標金額を大きく上回る1,000万円以上を売り上げ、いよいよこの10月、満を持して一般販売が開始されました。実際に商品を使用されたお客様からは「手放せないアイテムになった」「デザインが素晴らしい」などのお声をいただいています。
これまでの宅配ボックスの概念を覆す「ATMO」の開発秘話を、株式会社LIXIL LIXIL Housing Technology Japanビジネスインキュベーションセンターの伊東 純平さんと、デザインセンター デザインディレクターの井上 貴之さんに、OKIPPA運営弊社代表内山が伺いました(文中敬称略)。
左から株式会社LIXILの伊東 純平さん、デザインディレクターの井上 貴之さん、弊社代表取締役の内山 智晴
プライベートでOKIPPAを愛用していたプロのデザイナーによって発案されたプロジェクト
内山:「ATMO」に収容される置き配バッグに、「OKIPPA」を採用いただいた背景を教えてください。
井上:デザイナーである私自身が自宅で「OKIPPA」を愛用していたことがきっかけになりました。元々通販が好きで、石鹸などの日用品もほぼ全てをオンラインで購入しています。時間を有効活用するために利用しているオンラインショッピングですが、その便利さとは裏腹に、指定した時間に家に居なければならない不便さもあります。
自宅に箱型の宅配ボックスを設置することで対処していたのですが、子供が小学校に上がったタイミングで状況が変わりました。学用品などの買い物が増え、自宅に届く宅配便の量がさらに増えてしまい、宅配ボックスが1つでは足りなくなってしまったのです。
そこで、追加の宅配ボックス購入を検討している際に「OKIPPA」に出会いました。玄関先のスペースを取らずに宅配ボックスの役割をしっかりと果たす、非常に便利なものだと感じました。
一方で社内的には、コロナ禍の影響でオンラインショッピングの物量が増え、再配達が急増して社会的課題となっていたことから、この課題を解決できる新たな発想の宅配ボックスの開発を急いでいました。
こうした流れから、自分が実際に利用して便利だと感じていた「OKIPPA」を活用し、宅配ボックスを作るアイディアを提案しました。
また、LIXILでは「建てた後の家でも、自分の思い通りに修正を加えることができる」=「House Re – touch」と定義し、リノベーションとDIYの中間に位置する新商品開発に取り組んでいます。
従来の宅配ボックスは、商品そのもののデザインや機能性に注力して開発されたものが多いのですが、「ATMO」は「House Re – touch」の枠組みの中で“今ある家をアップデートする”立ち位置の商品として、従来の宅配ボックスとは全く違う視点で開発されることになりました。
こだわったのは、玄関空間との“一体感”
内山:どんな想いを込めてデザインされましたか?
井上:一番大切にしたのは、玄関空間との“一体感”です。私自身が実際に「OKIPPA」を利用していて、玄関のドアノブにかけた「OKIPPA」を見た時、もう少しドアと一体化したデザインに出来れば、さらにユーザー様に喜んでいただけるのではないかと感じました。
とはいえ、お施主様がこだわりを持って決めた住宅のデザインに、後から何かを付け足すということは、非常にハードルの高い行為です。様々なデザインや広さの玄関空間に溶け込むような商品を目指して、試行錯誤しました。
従来の宅配ボックスはその大きさゆえに、玄関空間の邪魔になってしまう点が課題です。「ATMO」は、中に「OKIPPA」を入れるスペースを確保しつつ、できる限り薄くコンパクトに作りました。また、縦のラインを意識したデザインも、縦に長いドアや建物にスッと溶け込ませる工夫の一つです。
同時に、「OKIPPA」の便利さをそのまま生かせるよう、機能的なデザインにまとめる必要がありました。
「OKIPPA」の最大の利点は、配達が一回で済むこと。不在中でも配達員の方々に「ATMO」の存在に気付いてもらい、利用してもらえなければ本末転倒です。
宅配ボックスだと分かるよう段ボール箱のアイコンを入れたのですが、そのアイコンが一瞬で目に入るよう、視界に入る情報量を最小化。
突起物のない滑らかな曲線でフラットな正面に見えるよう形作り、余計な色を入れず、極限までシンプルなデザインに仕上げました。
いかに今の雰囲気を壊さずに、配達員の方々には気付いてもらえる存在感を出すかが鍵でした。
再配達を減らし、サステナブルな社会の実現に貢献
内山:商品開発にあたり、どのようなことに重点を置かれましたか?
伊東:窓や玄関ドア、エクステリア製品、インテリア建材などの製品を提供する「LIXIL Housing Technology Japan」の中でも、新規事業部門である「ビジネスインキュベーションセンター」は、世の中のニーズをいち早く掴み、付加価値の高い商品やサービスを迅速に開発、新たなビジネスの可能性を検証することがミッションです。
コロナ禍の影響で置き配が増加する中、盗難の危険やプライバシーの問題が社会的課題となっていたため、より多くの方に安心して使っていただける宅配ボックスを開発することを一番に考えました。
また、弊社では従来型の宅配ボックスも販売していますが、スペースやデザイン、予算などがボトルネックとなり、設置をしたくてもできないユーザー様が一定数いるということもあり、そのような方々にも気軽に使っていただける商品を開発したいという思いもありました。
商品を通じて、サステナブルな社会の実現に貢献することも目指しました。インターネットで簡単に物が買える便利な世の中で、「当たり前に荷物が届く」物流システム。
しかし荷物の物量が増えて、再配達の問題がある中で、このままではこの「当たり前」の物流システムは、持続出来なくなるのではないかという危機感がありました。
「ATMO」をご利用いただくことで、再配達を減らし、配送員の方々の負担を軽減、二酸化炭素排出量の削減にも繋がります。
開発には3年程かかる商品もある中、「ATMO」は世の中のニーズに迅速に応えるという使命のもと、企画から販売開始まで約10ヶ月の異例のスピードで開発されました。
これまでに無い、新しいカタチの宅配ボックスに対するユーザーの反応を見る必要があったため、テストマーケティングの場として応援購入サービス「Makuake」を利用。
嬉しいことに、開始して3時間で目標金額は達成し、最終的にはその目標金額を大きく上回る1,000万円以上を売り上げ、いただいたコメントからの反応も上々であったため、正式販売に至りました。
「いつもを、幸せに。」する宅配ボックス
内山:「ATMO」を利用することで、お客様にはどの様な利点があるのでしょうか?
伊東:配達時間を気にせず、大切な人とゆっくり時間を過ごせますし、在宅での仕事にも集中でき、再配達をお願いする心理的な負担も軽減できます。それによって日々の暮らしがより快適に、豊かなものになります。
例えば、マンションに宅配ボックスがあっても、利用者が多いために空きが無く、結局再配達をお願いすることになってしまうといった声もよく耳にします。そうした悩みを抱える方が、手軽に設置して利用できるような商品です。
内山:最後に消費者の皆様に届けたいメッセージをお願いします。
伊東:LIXILは、住まいと暮らしを豊かにし「いつもを、幸せに。」することを大きなテーマに商品を開発しています。
ユーザー様にも配達員の方々にも優しい商品である「ATMO」を通し、自分のペースで暮らせる快適な住生活をご提供することはもちろん、再配達を減らしサステナブルな生活様式を取り入れるお手伝いができればと考えています。
ご購入はATMO公式サイトより
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