SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」とは? 今私たちにできること
(SDGs 3)
SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」は、SDGsの17個の目標の中でも多くの人が身近に感じる内容ではないでしょうか。今回は「健康と福祉」という抽象的な内容を、具体例を挙げてわかりやすく解説します。
目標達成に必要なことは何か、私たちにできることは何かを知ることですべての人が心身ともに健康に暮らせる社会を目指します。
SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」とは
目標3は、世界中の人たちが健康で充実した福祉の中で生活できることを目標にしています。
健康とは、体が元気で病気になっていないことだけではありません。WHOは世界保健機関憲章で「健康」を定義しています。
簡単に説明すると「健康とは体が元気なだけでなく精神状態も良いことをいう。心身ともに最高に健康でいることは、人種や宗教や信念や経済的な状況や社会的な差別を受けることなくみんなが認められるべき権利である」という内容です。
当たり前のことのように思えますが、現実の世界ではみんなが心身ともに健康で暮らせることができていません。SDGs目標3では、すべての人が当たり前に健康で充実した福祉の中で生活できる社会を目指しています。
具体的には大きく3つの目標を掲げています。
1.妊産婦と新生児と5歳以下の子が生きられる取り組み
日本では、病気になればほとんどの人は病院に行って治療を受けることができます。小さく生まれた赤ちゃんも医療によってしっかりと成長しています。しかし世界には人口数万人に対して医師が1人しかいないところもあります。
そういう地域では、適切な医療が受けられず5歳まで生きられない子どもがたくさんいるのです。住む場所や状況に関係なく妊産婦や小さな子どもたちの命を守る取り組みを世界規模で行います。
2.エイズなどの感染症や感染しない病気も含めて保健と福祉を充実させる
アフリカでは、エイズが若い人の命を奪っています。衛生的な設備が整っていないために水や土を介して感染する病気も流行しています。
目標3では、感染症だけでなくすべての病気をすべての国と地域で蔓延させることを食い止めることを目指しています。
3.薬物乱用やアルコールの過剰摂取の防止と治療を行い、たばこの規制も強化する
薬物やアルコールは、体の健康だけでなく精神にもダメージを与えます。目標3では、薬物乱用やアルコールの過剰摂取を防止し、すでに健康を損なってしまった人も治療を受けられる社会を目指します。
たばこの規制強化もします。たばこは、吸っている本人だけでなく周囲の人の健康にも悪影響です。たばこの煙から子どもたちを守ることで未来を守ります。
すべての人が健康に生活するために必要なこと
目標3では、世界中の人が十分な医療を受けて健康的な生活ができる社会を目指しています。目標達成するためには具体的にどのようなことが必要なのでしょうか。
ここからは、住んでいる場所や年齢に関係なく、そして病気の種類も関係なくすべての人が健康に生活するために必要なことについてお話しします。
ワクチン・予防接種・医療体制をいきわたらせる
アフリカで小さな子どもたちが命を落としている病気の多くはワクチンや予防注射で防ぐことができる病気です。
例えば、日本ではジフテリアは予防接種によって予防されています。しかし、ロヒンギャ難民たちは貧困のため予防接種が受けられず、難民キャンプでジフテリアが流行してしまいました。貧困や民族の枠を超えてワクチンや医療を行きわたらせることこそすべての人の健康に欠かせないことです。
ロヒンギャ難民の子どもたちを襲うジフテリア|日本ユニセフ協会
衛生的な環境を整える
5歳以下の小さな子どもたちは汚染された水によって命を落としています。汚染された水しかない環境では、危ないとわかっていても飲まなければ今日の命をつなぐことができません。
また、妊婦は衛生的な環境で出産しなければ母体の命にも影響がでます。健康に生活するためには、衛生的な環境が必要です。
「すべての人に福祉を」の「福祉」の意味とやるべきこと
ここまでは「健康」についてお話ししました。目標3では福祉についても触れています。福祉とはどういうことなのでしょうか。
ここからは、わかるようでわかりにくい「福祉」について考えてみましょう。
福祉の意味とは
©NHK (Japan Broadcasting Corporation)
福祉とは、心身ともに健康に生活するための仕組みをいいます。健康を一時的に求めるならばワクチンを配り、一時的に医療を提供すればいいのかもしれません。しかし、それだけでは持続可能な健康は得られません。
例えば、エイズならば治療だけでなく教育によって知識を普及させれば予防することができます。予防と治療の仕組み全体が福祉です。
日本には目に見える病気よりも目に見えない問題で福祉が必要になっています。
例えば8050問題は体よりも精神的に影響が出る問題です。50代の引きこもりの人を80代の親が養う問題を8050問題といいますが、この問題は福祉が介入しなければ解決が難しいかもしれません。
「8050問題」とは? 求められる多様な支援|NHK福祉情報サイトハートネット
福祉がやるべきこと
感染症などの知識教育をする
病気を予防する方法はワクチンや予防注射だけではありません。
エイズは、知識教育によって感染を防ぐことができます。マラリアは、蚊が媒介する病気です。蚊が水たまりで繁殖することを知れば、水たまりをなくすことができます。
感染症はひとり一人が「うつさない」「うつらない」という意識を持つことで予防することができます。知識を広めることは医療知識がない人にでもできる福祉活動のひとつです。
包括的なケアシステムの構築
目標3は途上国だけに関係することではありません。途上国と先進国では抱えている問題が違いますが、先進国である日本でも福祉がやるべきことはまだまだあります。引きこもりや老老介護の問題は、ひとりで対応することはできない問題です。
包括的なケアができる福祉のシステムを構築することで、立場や年齢そして職業に関係なく健康的な生活を送ることができるのではないでしょうか。
実際に行われている世界の取り組み
健康と福祉は、範囲の捉え方によって取り組みも変わります。ここからは世界規模で行われている健康と福祉の取り組みを紹介します。
所得格差を埋める「COVAX(コバックス)」
コバックスは2020年に発足したワクチンの取り組みです。新型コロナウィルスのワクチンは異例の速さで完成しました。しかしワクチンを購入するためには多額の資金が必要です。WHOは、ワクチンが購入できない国にもワクチンが行きわたるようにするためにコバックスを立ち上げました。
コバックスは、所得が高い国がコバックスに資金を出します。そしてコバックスが受け取った資金でワクチンをまとめて購入し、資金がだせなかった国にも平等に分配するのです。コバックスには日本やアメリカそして中国を含む180か国以上が参加しています。
COVAX(コバックス)とは ワクチン共同購入し途上国に分配|日本経済新聞
COVAXファシリティ|新型コロナウィルス緊急募金|日本ユニセフ協会
医療の格差を埋める「遠隔診療」
病院が遠ければ受診率は下がります。受診料だけでなく移動にかかる費用も大きな負担です。
そこで病院や医師が足りない地域でもしっかりと医療を受けられるように考えられた方法が遠隔診療です。遠隔診療ならば、遠くにいる医師が診察の合間に遠くにいる患者を診察することができます。
カメラで有名なコニカミノルタは、新興国での遠隔診療に協力しています。
ソーシャルイノベーション新興国の医療課題に「遠隔診療」で応える-ポータブル医療デバイスを活用した遠隔診療|コニカミノルタ
私たちにできること
SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」は、先進国と途上国だけの問題ではありません。私たちの自治体や地域でも考える必要がある問題です。健康は、自分を大切にすることから始まります。正しい知識を得ることは、自分の健康だけでなく他人の健康も守ります。
福祉は、ひとり一人が生まれた場所や社会的な立場で人を判断しないことから始まります。そして「たった一つの正解」に当てはめることを解決策とするのではなく、それぞれの人をありのままに受け止める心をもつことが福祉の基盤ではないでしょうか。
おわりに
SDGs目標3は、まだまだ日本でもやるべきことがあるテーマです。「心身ともに健康な生活を送るためにできること」や「自分のまわりに手を差し伸べる人はいないか」など今すぐできることから始めてみてはいかがでしょうか。
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