(COP26までおさらい)CO2排出が与える影響とは?温室効果や水害など原因もまとめて解説
気候変動枠組条約締約国会議(Conference of Parties)、COP26が11月12日に終わる予定でしたが会期は延長され、予定より1日遅れで閉会しました。
COP26の成果となる「グラスゴー気候合意」では、「産業革命前からの気温上昇は1・5度以内に抑える努力を追求する」と明記され、議論が長引いた石炭火力発電の利用については、当初文案の「段階的な廃止」から「段階的な削減」に変更されました。
COPは国連の「気候変動枠組条約」に参加している国が集まり、気候変動という地球規模の問題について国や民間という枠を超えて議論する会議で、1995年から毎年開かれて今年で26回目でした。
多くの人は「CO2が気候変動・地球温暖化に関係していること」や「CO2排出量を減らす必要があること」はなんとなく聞いたことがあるのではないでしょうか。CO2は二酸化炭素の元素記号です。
しかし「なぜCO2排出量が多くなってはいけないのか」や「CO2が地球を暖めるプロセス」についてはよくわからない人が多いかもしれません。
今回は、CO2排出量とCO2と地球の関係についてわかりやすくお話しします。
CO2排出量はなぜ問題になるのか
そもそも温室効果とは
CO2排出量が問題になっている理由は、CO2には温室効果があるからです。言葉の通り、温室のように地球を暖める効果をCO2は持っています。
地球の気温は、太陽から受け取るエネルギーに関係があります。物質には、受け取ったエネルギー相当のエネルギーを同じようにお返しする性質があります。
地球の表面も太陽から受け取ったエネルギーと同等のエネルギーをお返ししようとするのですが、太陽のエネルギーはとても強いため、同等のエネルギーをそのまま返してしまうと、地表の気温はマイナス19度になるといわれています。
しかし、実際の地表はマイナス19度よりもずっと高いですね。この温度差は、地球が持っている温室効果によって引き起こされているのです。温室効果がなければ、地球はもっと寒い星になっていたでしょう。
CO2排出量と温室効果の関係
温室効果は、温室効果ガスによる効果です。温室効果ガスの約76%はCO2が占めています。
温室効果とは、わかりやすく説明すると「太陽から受け取ったエネルギー相当のエネルギーを地表はお返しします。しかし、大気中にあるCO2が地表からのエネルギーを途中で受け取って、再び地球の大気に戻してしまう」ということです。
つまり、CO2が多くなればなるほど太陽にお返しするはずだったエネルギーは途中でCO2につかまってしまい、地球を暖めるエネルギーとして使われてしまうのです。
CO2排出量が増えれば増えるほど、地球を暖めるエネルギーは地球上に蓄えられます。CO2排出量が地球温暖化の原因といわれる理由は、まさにCO2の温室効果にあるのです。
・二酸化炭素の増加が温暖化をまねく証拠|地球環境研究センター
・地球温暖化と二酸化炭素の関係~二酸化炭素が増えている原因~|アピステ
CO2排出量上昇によって引き起こされる水害
水害のポイントは「水蒸気」
CO2排出量上昇によって、地球温暖化がこのまま進むと、今まで以上に影響は大きくなると考えられています。しかし、どれくらいの影響がでるのかははっきりわかっていません。
なぜならば、地球温暖化はCO2を含む温室効果ガスだけによって引き起こされることではなく、すでにおきてしまった地球温暖化がさらに追い打ちをかけるように地球に影響を与える可能性があるからです。
つまり、CO2排出量と温室効果は比べることができたとしても、CO2排出量と地球温暖化の結果はまだ予測不能な部分があります。
実際に、数十年前までは予測していなかったような災害が世界中で多発しています。その代表例が大雨や洪水などの水害です。
「地球が暖められること」と「雨が降ること」と「CO2排出量」は一見つながりがないように感じます。しかし、この3つをつなげる役が「水蒸気」なのです。
地球を暖める温室効果の力を一番握っているものは、CO2ではなく水蒸気です。大気の温室効果の半分は水蒸気によるもので、CO2による影響は20%程度になります。
水蒸気は、地表が太陽にお返ししようとしたエネルギーの多くを受け取ることができるのです。
そう考えると「たかだか20%のCO2よりも水蒸気の量を減らしたほうが効率的に地球温暖化対策はできる」と考える人がいるかもしれません。しかし、水蒸気を減らすためには、CO2排出量を抑える必要があるのです。
CO2排出量を抑えなければならない理由
大気中の水蒸気の多くは海から発生しています。海水は水蒸気になって大気中に取り込まれます。
大気中に取り込める水蒸気の量は気温によって変わります。気温が高くなればなるほど蓄えられる水蒸気の量は増えます。CO2は20%程度しかありませんが、CO2排出量が増えると温室効果が高まり気温が上昇するのです。
すると大気中に蓄えられる水蒸気量は増え、さらに温室効果を高めます。つまり、大気中の水蒸気量を減らすためにもCO2排出量を減らす必要があるのです。
近年は、地球温暖化によって気温が上昇しています。そのため、大気中の水蒸気量は増え、雨量も増えています。水害は、雨がもたらす災害であり、雨のもとは大気中の水蒸気であり、水蒸気を増やしている原因はCO2が作りだしているのです。
世界が動いた! パリ協定からCOP26までの流れ
世界は、CO2排出量が地球温暖化に関係していることがわかってから、さまざまな対策を考えてきました。中でも2015年のパリ協定は重要なポイントです。
さらにパリ協定に続き、さまざまなプロセスを経て2021年11月のCOP26が開催されました。ここからは、世界が打ち出してきた代表的な取り組みについてお話しします。
パリ協定
パリ協定は2015年のCOP21で京都議定書(1997年 COP3)の後継として結ばれました。パリ協定が京都議定書よりも注目されるポイントは「地球規模で気候変動について取り組む」です。
京都議定書では、先進国だけが気候変動に対して取り組む対象になっていました。そのため、一部の先進国からは「なぜ自分たちだけが」という不満の声があがっていたのです。
時代は変わり、途上国と思われていた国々もめまぐるしく発展しました。そこで2015年のパリ協定では先進国だけでなく途上国と言われていた国も含めて地球規模で気候変動に取り組む内容にしたのです。
今さら聞けない「パリ協定」 ~何が決まったのか?私たちは何をすべきか?~|経済産業省 資源エネルギー庁
なぜCOPは大切か
COPとは、気候変動枠組条約締約国会議(Conference of Parties)の略です。COPに続く数字は、回数を表しています。COP21は21回目の会議ということになります。
COPは1995年から毎年開かれています。ただ、2020年は新型コロナウィルスの拡大により2021年に延期されています。
COPがなぜ重要かというと、地球環境について世界が一丸となって取り組み方を考える機会だからです。そして、COPには国の代表者だけでなく産業界からの出席者もオブザーバーとして参加します。
気候変動という地球規模の問題について国や民間という枠を超えて参加できる会議がCOPなのです。
COP26
COPは多くの会議を重ねてきました。2021年10月31日(11月1日)からCOP26が英国のグラスゴーで開催されました。
COP26は今まで以上に注目されていました。その理由は、想像以上に地球温暖化が進んでしまったため、もっとCO2排出量の削減目標を厳しくしなければならないことがわかったからです。
2021年8月にIPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)が発表した結果は衝撃的な内容でした。COP26ではIPCCの発表を受けて、今後どのようにしてCO2排出量を削減していくのかを話し合います。
・地球温暖化の原因は人間の活動と初めて断定 国連IPCCが報告書|NHKに NEWS WEB
・IPCCとは
・IPCC第6次評価報告書 第1業部会(WG1)(2021)政策決定者向け要約(SPM)の概要(ヘッドライン・ステートメント)
CO2排出量を削減するために今すぐできること
COP26に向けて、CO2排出による地球温暖化の予測データが発表されました。
2021年8月に発表されたIPCC第6次報告書は、世界に衝撃を与えました。あまりに厳しい内容であきらめたくなるかもしれません。
しかし、COP26で議長になる英国のシャーマ前民間企業エネルギー産業戦略相は、COP26に参加する国すべてがCO2排出量をゼロにすることが大切であると開催前に発言し、COP26でも、気温の上昇を1.5度に抑える努力を追求し、各国の2030年に向けた排出削減の目標について、来年の末までに必要に応じて検証し、さらに強化することを要請していました。
COP26の最終合意では、会期延長の結果、気温上昇1.5度に抑えることを目指して温暖化ガス削減を進めることを確認しています。最大の焦点だった石炭火力の利用に関する合意文書の表現は「段階的廃止」から「段階的削減」に最終局面で修正されました。
おわりに
11月12日、「世界の主要な学術出版社15社が気候変動に関する重要な学術論文を無料で一般公開」と発表されました。今年ノーベル物理学賞に決まった米プリンストン大の真鍋淑郎氏の研究論文も対象に含まれているそうです。英語原文の論文ですが、「世界中の一般市民を、公正で信頼できる情報に直接結び付ける」目的だそうです。
気候変動論文を無料公開 主要出版社、真鍋さん研究も―COP26|jiji.com
論文公開ページ
日本は、2050年CO2排出量ゼロを目指しています。
具体的には、「2050年目標と整合的で、野心的な目標として2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指します。さらに50%の高みに向けて挑戦を続けてまいります。」と言っています。(気候変動リーダーズサミット)
CO2は、とても身近なところで毎日排出されています。ゴミを減らす、車の移動を減らす、節電を心がけるなど少しの心がけでCO2排出量は変わります。
目標がどの程度になっても、地球温暖化を少しでも食い止め、人間にとって適度な快適さをこれからも享受できるようにするため、私たち自身が地球や自然にとっても適切で快適な環境を意識し、今できることにひとり一人が取り組めるといいと思います。
これから先の20年は、すでに排出されたCO2の影響が続くといわれています。その先の地球を守るために、私たちも今できることを始めましょう。
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