SDGsの目標15「陸の豊かさを守ろう」生物の多様性と衣食住への影響とは?
(SDGs 15)
陸のうえで生活しているわたしたちですが、あらためて陸の豊かさについて考えるといまいちピンとこない方が多いのではないでしょうか?
陸の豊かさを客観的に測るものさしが「生物の豊かさ」と「自然の豊かさ」です。
この記事では陸の豊かさにまるわる現状や課題、個人レベルでどのような取り組みができるのかについてご紹介します。
SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」をおさらいしよう
はじめにSDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」の内容について詳しくみてみましょう。
行動目標がわかる!ターゲットをわかりやすく解説
SDGsとして掲げる目標SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」は、合計12個のターゲットがあげられています。
12個のターゲットをわかりやすく簡略化したのが以下の通りです。
1.陸域生態系と内陸淡水生態系、それらのサービスの保全と回復、持続可能な利用を確保する
2. 森林減少の阻止、劣化した森林を回復のために世界全体で新規植林や再植林を大幅に増加させる
3. 砂漠化や干ばつ、洪水の影響を受けた土地などの劣化した土地と土壌を回復させる
4. 持続可能な開発に向けて山地生態系の能力を強化するため生物多様性を含む山地生態系の保全を確実におこなう
5. 自然生息地の劣化の抑制や生物多様性の損失を阻止し、2020年までに絶滅危惧種を保護・対策を講じる
6. 国際合意に基づき遺伝資源への適切なアクセスを推進する
7. 保護の対象となっている動植物種の密猟や違法取引を撲滅するための緊急対策を講じる
8. 外来種の侵入を防止し、これらの種による陸域・海洋生態系への影響を大幅に減少させるための対策を導入する
9. 生態系と生物多様性の価値を国や地方の計画策定、開発プロセス及び貧困削減のための戦略及び会計に組み込む
a. 生物多様性と生態系の保全、持続的な利用のために資金の動員と大幅な増額をおこなう
b. 保全や再植林を含む持続可能な森林経営を推進するために、資金調達だけではなく開発途上国への十分なインセンティブ付与のための資源を動員する
c. 持続的な生計機会を追求するため、保護種の密猟や違法な取引に対処する努力への世界的な支援を強化する
・算用数字で掲げられている1~9:目標15の「陸の豊かさも守ろう」を実現するための具体的な行動目標
・アルファベットで表記されたa~c:ルールの見直しや資金確保、支援を主とした目標達成のための手段や措置
SDGsグローバル指標(SDGs Global Indicators)|外務省
陸の豊かさにまつわる現状と課題
現在どれほど陸の豊かさが失われ、どのような悪影響を及ぼしているのかについてご紹介します。
世界では1年で東京ドーム約102万個分の森が消滅
国際連合食糧農業機関(FAO)のデータによると、2020年時点で世界の森林面積は約40億ヘクタールであり、世界の陸地面積の約3割を占めています。
2010年から2020年の間に森林面積は世界全体で年平均470万ヘクタール減少。
1年間で東京ドーム102万個分の森林が失われている計算です。
森林・林業分野の国際的取組|林野庁
世界森林資源評価(FRA)2020メインレポート 概要|林野庁
過去30年間で失われた森の9割は熱帯地域で起こっており、
日本国内での取り組みだけではなく開発途上国を含めた世界全体の努力が必要です。
Global Forest Resources Assessment 2020(世界森林資源評価2020)|FAO
SDGs15のキーワード「生物の多様性」に注目
SDGsの目標15を読み解くうえで大切なキーワードは「生物多様性」です。
生物多様性とは山・海・川・森など、多様な自然のなかでさまざまな種類の生き物がかかわりあいながら生きていることを表す言葉。
それぞれの生き物は食物連鎖や共生の関係など、お互いに影響を与え・与えられながら存在し自然界のバランスを保っています。
日本では過去平均とくらべ、絶滅速度が1,000倍以上に上昇。20世紀以降の地球ではこれまでのよりも急速に生き物の絶滅が進んでいます。
人間にとってよりよい地球環境だけではなく、生きものすべてが適した土地に住み、すごしやすい環境に整える必要/span>があるのです。
日本のいきものたちのいま|ecojin(エコジン)
日本にいる外来種|ecojin(エコジン)
陸の豊かさが失われることのデメリット
生態系の破壊や森林減少など、陸の豊かさを失うデメリットは大きく3つあります。
・食料が失われる
・建物や製品がつくれなくなる
・生物の絶滅により土地が枯渇する
人間にとってのデメリットは衣食住への影響です。
森林が減少すると食料を満足に調達できなくなり、木材が必要な建物や製品の生産がスムーズにできなくなります。
また二酸化炭素の排出量が減り、地球温暖化の加速や大気汚染が拡大。住むことさえむずかしい状況になるかもしれません。
生物の絶滅は多様性や生態系が崩れてしまうだけではなく、農作物への被害につながります。
オオカミが絶滅した日本では鹿が爆発的に増え、森林の草木が食いつくされたり農作物が狙われたりなどの被害が拡大しました。
陸の豊かさが失われることで連鎖的に生物の多様性と生態系が崩れてしまいます。
陸の豊かさを守る取り組み事例
陸の豊かさを守る・回復するために、日本でおこなわれている取り組みを3つピックアップしてご紹介します。
住友林業|森林循環の仕組みを整える
© SUMITOMO FORESTRY CO.,LTD.
木材建材事業を中心に木を活かして暮らしを支える住友林業は、手入れが行き届いていない「荒れた森林」に注目しています。
木材の需要が高まった昭和20年代につくられた人工林を荒れた森林と認識。
木を植えて放置するのではなく、伐採・使用・植林のサイクルをつくり、土砂崩れや洪水などの被害、生物が住みにくい環境の改善を目指しています。
富士通|ドローンとAIを活用した絶滅危惧種の保護
©2021 FUJITSU
長年にわたりサステナビリティのパートナーシップを結び、固有種見守りプロジェクトを続ける富士通は、ドローンによる絶滅危惧種の見守りと調査をおこなっています。
ドローンとAIを導入することでコスト削減や正確性・効率化が高まり、保護に関するさまざまな施策を実施しやすくなりました。
UCC上島珈琲|7カ国でおこなう生物多様性プロジェクト
© UCC UESHIMA COFFEE CO., LTD.
UCC上島珈琲はカリブ海初のレインフォレスト・アライアンス認証農園を所有。
生産者が森林の保護や農場労働者の人権を推進するなど、持続可能な農法に従っていることを意味します。
2008年の認証取得以降、生態系保護のために害虫駆除のトラップを設置。
そのほか農薬や殺虫剤の使用禁止を知らせる立て看板の設置など、限りある資源の保全に注力しています。
UCCのサステナビリティ 生産者と共に|UCC上島珈琲株式会社
陸の豊かさを守るために一人ひとりができること
陸の豊かさを守るためにできることは、私たちの日常生活のちょっとしたシーンで取り組むことができます。
植林活動、森づくりに参加
陸の豊かさを知るうえで、ダイレクトに自然のありがたみを実感できる活動が「森づくり」です。
例えば、1991年に始まったイオンの植樹活動は、2013年に1000万本の植樹を達成しました。
日本だけではなく海外でも植林活動をおこない、2021年2月末時点でのイオングループ累計植樹本数は約1,200万本にも及びます。
森づくりに参加することで木材がどれほどの年月をかけて生み出される貴重な資源なのか、身をもって実感できるはずです。
認証マーク付きの製品を選ぶ
Forest Stewardship Council® – FSC® Japan
買い物のときは商品に表示されている環境ラベルに注目してみましょう。
一般的には「PEFC」「FSC」「レインフォレスト・アライアンス」の認証マークが知られており、これらの認証マークが表示されている製品を購入するだけで森林保全に参加できます。
PEFC 森林認証プログラム|環境省
FSC認証について|FSC® Japanレインフォレスト・アライアンスの商標使用要件およびガイドライン|レインフォレスト・アライアンス
FSC・人権に配慮した製品|FSC
国内外来種の問題について知る
生態系の破壊を招く原因のひとつが外来種です。
日本に存在する外来生物は2000種以上存在し、被害は深刻化しています。生態系の破壊や農作物の食い荒らし、人への危害など悪影響をもたらすのです。
外来種は侵入エリアで生きる在来種を圧倒し、生態系を破壊します。
完全に駆除したとしても元の生態環境を取り戻すのはほぼ不可能であるといわれており、対策が必要です。
外来種の存在やどのような悪影響を与えているのかについて知ると、陸の豊かさを守る意識だけではなく、生き物に対する多角的な見方ができるようになりますよ。
まとめ
陸の豊かさを考えるうえでポイントになるのが生物の多様性と森林の豊かさです。
生態系を保つために豊かな自然が必須であり、壊すのも育てるのも今後の策によって左右されます。
生き物や自然に対して興味を寄せるだけでもSDGs達成の一歩に。
いつもの生活、いつものルーティンからできることはないか意識を向けてみませんか?
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