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カーボンニュートラルとは?メリットとデメリットから脱炭素社会の未来を紐解く!

さまざまなメディアで目にする「カーボンニュートラル」という単語。
見たことはあっても、どのような意味なのか、どういった活動をすることがカーボンニュートラルにつながるのか、頭の中に思い浮かばない人もいるのではないでしょうか。

カーボンという単語から連想して、例えば「脱炭素社会」のイメージを持つ人もいると思います。
ただ、これはどちらかというと「カーボンニュートラルの実現にともなう未来像」であって、カーボンニュートラルそのものの意味ではありません。

このように、一目見ただけでは意味が分かりにくい単語のカーボンニュートラルですが、日本が2050年までに目指す意味や反対意見などを掘り下げると、その概念や具体的な取り組みが少しずつ見えてきます。
この記事では、カーボンニュートラルの意味・日本における理解や目標設定・反対意見などに触れつつ、個人で実現に向けて取り組めることをご紹介します。

今さらですけど「カーボンニュートラル」って何ですか?

地球を手に持って眺める
まずは、カーボンニュートラルという単語が何を意味するのかについて、かんたんにおさらいしましょう。
決して難しい意味合いの単語ではなく、単純に考えれば「地表のカーボンをニュートラルにすること」とイメージすると、理解がしやすいかもしれません。

かんたんにいうと「プラスマイナスゼロ」の状態のこと

カーボンニュートラルとは、ライフサイクルの中で二酸化炭素の排出量と吸収量がプラスマイナスゼロになる状態のことです。
大ざっぱに説明すると、世界中の植物の光合成による二酸化炭素の吸収量と、世界中で生物が排出する二酸化炭素の排出量がイコールになった状態が、カーボンニュートラルのわかりやすい構図です。

植物が成長する過程で光合成は行われ、やがて枯れて腐敗すればCO2が排出されます。
人間が木材などをバイオマスエネルギーとして燃焼させた場合も、CO2は排出されますが、樹木の伐採後に木を新たに植えれば、その成長の過程でCO2は若木に吸収されます。

問題となるのは、人間が化石燃料などを使用することによって、本来は地中に固定されていた炭素を地表に放出しているケースです。
地上で必要十分の量が循環していたところに、新たにCO2が排出されるわけですから、大気中の本来のバランスを崩してしまいます。

まとめると、CO2の排出量が大気中のCO2の増減に影響を与えない状況を、カーボンニュートラルといいます。

※参考
「カーボンニュートラル」って何?脱炭素社会に生きるための基礎知識|EMIRA
なぜ木質バイオマスを使うのか|林野庁

環境省はどう定義しているか

間伐材
次に、環境省がカーボンニュートラルについてどのように定義しているのか、指針「我が国におけるカーボン・オフセットのあり方について」から抜粋します。

(カーボン・ニュートラルとは)
カーボン・ニュートラルとは、社会の構成員が、自らの責任と定めることが一般に合理的と認められる範囲の温室効果ガスの排出量を認識し、主体的にこれを削減する努力を行うとともに、削減が困難な部分の排出量について、クレジットを購入すること又は他の場所で排出削減・吸収を実現するプロジェクトや活動を実施すること等により、その排出量の全部を埋め合わせた状態をいう。

※出典元:我が国におけるカーボン・オフセット のあり方について(指針)|環境省

引用部分の「社会の構成員」とは、一般市民や企業が該当します。
つまり、日常生活・企業活動の中で、温室効果ガス(CO2など)の排出量と、他の場所で実現した排出削減・吸収量がイコールであることを、環境省はカーボンニュートラルと認識していることがわかります。

なぜ「2050年」までに実現すべきなのか

菅総理は、2020年10月に行われた所信表明演説の中で、以下のように宣言しています。

「我が国は、二〇五〇年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち二〇五〇年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします」

※出典元:第二百三回国会における菅内閣総理大臣所信表明演説

ここで「2050年」という期間が明確になっているのは、世界中の科学者や専門家から構成される地球温暖化(気候変動)研究のための国連内組織IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の「IPCC1.5度特別報告書」の中で、産業革命以降の温度上昇を1.5度以内に抑えるためには、2050年近辺までのカーボンニュートラルが必要とされているのが、大きな理由の一つです。
2050年までにカーボンニュートラルを実現できないと、地球が暑くなりすぎて、人間の生活に大きな影響を及ぼす可能性が高いのです。

また、日本は2015年にパリで開かれた「パリ協定」の締結国で、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑えるという長期目標を担う国の一つです。
そのため、国家として地球温暖化対策を進めるにあたり、カーボンニュートラルへの挑戦は避けられないのです。
©IGES
このような傾向は、決して日本だけの話ではありません。
アメリカ・EU・英国・中国・韓国など、たくさんの国や地域が2050年に照準を合わせて、カーボンニュートラルの実現に向けて動いています。

当然ながら、その動きをビジネス・金融市場が指をくわえて見ているはずもなく、気候変動の問題を新たなチャンスととらえて、ESG投資など環境に配慮した企業に投資する動きも活発化しています。
国家間だけでなく、さまざまな人々の思惑をはらみながら、カーボンニュートラルの実現に向けた動きは加速していくものと考えられます。

※参考
「IPCC 1.5℃ 特別報告書」 ハンドブック|IGES 公財)地球環境戦略研究機関
「カーボンニュートラル」って何ですか?(後編)~なぜ日本は実現を目指しているの?|経済産業省資源エネルギー庁
第6次評価報告書の第1業部会(WG1)政策決定者向け要約(SPM)の概要(ヘッドライン・ステートメント)-暫定版-

カーボンニュートラルのメリットと「おかしい」という意見

カーボンニュートラルに関する情報や記事を、新聞・テレビ・ポータルサイトなどで見かけたとき、その論調が分かれることがあります。
確かに、カーボンニュートラルの実現には数多くのメリットがあるのですが、一方で日本の現状をまったく考えずに政府が発言しているという意見も見られます。

わたしたちがカーボンニュートラルについて考える場合も、ただ「環境によいこと」だという思い込みから物事を判断するのではなく、現実的な視点を忘れないようにしたいものです。

カーボンニュートラルを実現した際のメリット

カーボンニュートラルの状態を維持できれば、地球規模の気温上昇を防ぐことができるだけでなく、人類はそれにともなう副産物を得ることもできます。
もし、日本が早期にカーボンニュートラルを実現できた場合、以下のようなメリットが期待できます。

地球温暖化の進行を妨げる

太陽光線
カーボンニュートラルを実現した場合の直接的なメリットとしては、地球温暖化の進行を食い止められる点があげられます。
日本の最近の事情からイメージすると、真夏日や熱帯夜の日数・最高気温更新日の減少が期待できます。

気温が落ち着いてエアコンを使用する時間が減れば、その分だけ環境への負荷は減りますし、気候変動のリスクも低くなります。
わたしたちが暮らしやすい夏を過ごしたいと心から思うのであれば、カーボンニュートラルに向けて何ができるのかを考えることが、将来の気温上昇を防ぐことにつながります。

持続可能な生活、経営ができる

風力発電
化石燃料は、わたしたちの生活を支えてくれる非常に便利なものですが、それができるまでには途方もない時間がかかるものと考えられています。
燃焼時に大量のエネルギーが取り出せる点で魅力的ではあるものの、残念ながら無限に手に入るわけではなく、いずれ枯渇することが危惧されています。

例えば、太陽光・風力などの自然エネルギーだけで電力などを確保できるようになれば、資源を巡っての争いもなくなりますし、将来的には企業の経営面でのコストカットも期待できます。
太陽光や風力は、世界中の人々にとってほぼ平等に得られる恩恵のため、技術の向上にともない持続可能な生活や経営を支える重要な発電方法となるでしょう。

企業価値の向上

太陽光発電パネルが浮く湖
公益財団法人自然エネルギー財団の推計によると、太陽光・風力発電のコストは、将来的に下落するものと考えられています。
具体的な数値としては、2018年/19年時点での平均が15.3円/kwhなのに対して、25年には5.7円/kwh、30年には5.2円/kwhと算出されています。

コストが下がっている要因の多くは技術的な進歩によるもので、これは同時に自然エネルギーの活用に携わっている企業価値の向上にもつながっていきます。
革新的な技術がESG投資の対象となり、より環境に配慮した技術が新たに生まれる可能性もあります。

その恩恵としてカーボンニュートラルが実現すれば、わたしたちはより暮らしやすい世界で生活することができます。

※参考
日本の太陽光発電の発電コスト 2019年7月 現状と将来推計|自然エネルギー財団

カーボンニュートラルの影響を危惧する声も

EVチャージングステーション
先にお伝えしたメリットがある一方で、急速にカーボンニュートラルに向けた取り組みを進めようとする政府との間に温度差を感じている企業もあります。
そのような日本企業の一つがトヨタ自動車で、豊田章男社長は、欧米と同じ比率でEVへの移行は現実的でない・2050年でのカーボンニュートラルは「国家のエネルギー政策の大変革」なしには難しいと述べています。

同様の意見は国内の若者からもあがっており、日本財団が全国の17~19歳男女に対して行った調査によると、2050年カーボンニュートラルが実現可能かどうかという質問に対して「いいえ」と回答した人が35.4%・「わからない」と回答した人が50.2%と、首相の方針に反対する人・疑問を抱いている人が多いという結果が浮き彫りになっています。

※参考
豊田章男社長の「警鐘」…カーボンニュートラルで日本経済は沈没する|現代ビジネス
若者に「無理」と笑われている〈カーボンニュートラル〉|キヤノングローバル戦略研究所
18歳意識調査 「第34回 – 脱炭素 –」要約版|日本財団

既存の方法論で実現は難しいのかもしれない

このような状況を考えると、既存の方法論からイメージするだけでは、カーボンニュートラルの実現は非現実的な話なのかもしれません。
交通機関ひとつとっても、地方での暮らしは自動車なしには成り立たない地域もあり、仮にEV化を進めたとして、その地域への効率的な電力供給をどうするのか課題が残ります。

かといって、すべての交通手段を公共交通機関に移行しようと考えると、人々が暮らす区域を明確に区分しなければ、運用は難しくなるでしょう。
例えば、居住区・農業区・工業区・商業区のように、住民それぞれが携わる仕事に応じて居住区から移動するような流れが生まれると、生活の自由度が落ちるおそれもあります。

他の分野でも、急速にカーボンニュートラルを進めようとすることで、何らかのひずみが生じる可能性があるものと考えられます。

それでも、わたしたちはカーボンニュートラルを無視できない

カーボンニュートラルは、2050年までに実現するとは限らず、個々人の意見もさまざまです。
しかし、それでも、わたしたちが地球で暮らしていく上で、カーボンニュートラルは無視できないファクターです。

地球温暖化がもたらした問題は、日々わたしたち人類の生活をおびやかしています。
今年8月9日にIPCCから発表された第6次評価報告書第1業部会(WG1)報告書では、気温情報は2011~2020年ですでに約1.09℃上昇したことなどが発表され、人間の活動がこれらCO2排出増加による気候変動の原因であるとはじめて断定されました。地球温暖化、気候変動をもたらしてしまった人間はこれからも地球に暮らします。その人間のひとりとして私たちも最低限、以下のような問題意識を持つことが大切です。

暑すぎて日本に住めなくなるかも?

CLIMATE SUMMIT 2014©WMO
過去の例にないレベルの気候変動が見られるようになった日本では、北海道のような比較的冷涼な気候の地域でも、熱帯夜が続くようになりました。
もし、このまま気温が上昇し続ければ、やがて日本から季節感が失われるだけでなく、あまりにも暑すぎて住めなくなる地域が生まれる可能性があります。

世界気象機関(WMO)が配信している動画の「2050年の天気予報(2014年9月配信)」の中では、東京で真夏日が2ケ月にわたって続くなど、気象科学にもとづいて温暖化が進んだ時代の日本を予測しています。
現実感があり、非常によくできた動画なので、ぜひ一度視聴して欲しいと思います。

※参考
気候変動は、2050年の天気にどのような影響を与えるのでしょうか? |国際連合広報センター

地球温暖化で沈む島

ツバル遠景© National Institute for Environmental Studies
海外に目を向けると、必ずしも主原因とは限らないものの、地球温暖化の影響によって日々の暮らしに深刻な影響が出ている島があります。
9つのサンゴ島で構成された国「ツバル」は、サンゴ礁の上に砂が堆積してできた島で、満潮時に海水面以下になる地域では、サンゴ礁の穴を通して水がにじみ出してきます。

平均潮位は上昇傾向にあり、首都フナフチにおける2005年6月までのデータによると、過去12年間の平均潮位の上昇傾向は4.3mm/年となっています。
地球全体で見た場合に、20世紀に観測された平均海面上昇速度が1.2~2.2mm/年であることを考えると、非常にハイペースであることがわかります。

もともと、国土の海抜が最大で5mほどの島であることから、海面の上昇は生活の問題に直結します。
海水が国土に入り込めば洪水となり、作物を育てることができなくなります。

しかも、ツバルの人々は基本的に自給自足生活を送っているため、ある意味では他国の経済発展の犠牲になっているとも言えます。
このようなアンフェアな現実を知った上で、日本人も島国であることを鑑み、気を引き締めたいところです。

一人ひとりがカーボンニュートラルに向けてできること

国内外に目を向けると、カーボンニュートラルの達成に対して、個人では何ら貢献できそうにないと思えるかもしれません。
しかし、視点を変えて考えると、一人ひとりがカーボンニュートラルに向けてできることは、少なからず存在しています。

エアコンや暖房に頼らないため、クールビズ・ウォームビズを徹底する。
照明をすべてLEDに変える。
都市部で暮らしているなら、自動車を手放して自転車や公共交通機関を活用する。
ESG投資ができる投資信託を探してみる。

上記以外にも、普段の暮らしの中で取り組めることが見つかるはずです。

※参考
温暖化の影響Q4 海面上昇で消える島国|地球環境研究センター
ツバルの森|カーボン・オフセットについて知りたい

おわりに

単語だけを見ると、何となく複雑そうに見えるカーボンニュートラルですが、その意味は非常にシンプルなものです。
しかし、それを実現するための道のりは平坦なものではありません。

逆に言えば、日本でカーボンニュートラルが実現できた場合、そのノウハウが世界に輸出される可能性もあります。
個人単位で貢献できる方法を実践することも含め、カーボンニュートラルに向き合うことは、そのまま日本の未来に向き合うことと言えるでしょう。

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