SDGsの目標6「安全な水とトイレを世界中に」の理由と世界の実情とは?
(SDGs 6)
SDGs目標6は「安全な水とトイレを世界中に」です。
安全な水もトイレも当たり前にある日本で暮らしていると、その価値や大切さを実感する機会は少ないのかもしれません。
今回は、世界の水とトイレ事情をわかりやすく解説し、大切さとそれらを守るために私たちにできることをお話しします。
SDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」とは
目標6は、世界中の人が安全な水を飲み、衛生的なトイレを使えるようにしようという目標です。
8つのターゲットの中には、安全な水を確保するだけでなく、2030年までに国境を越えて統合水資源管理を実施することも含まれています。
統合水資源管理とは、安全な水をずっと供給できるようにシステム化して、経済や生態系を維持していく管理のことです。
つまり、目標6では単に「安全な水とトイレを世界中に配ればいい」ということではなく、持続可能なかたちで水資源を守ることを目指しています。
SDGs 6. 安全な水とトイレを世界中に|SDGsクラブ(日本ユニセフ協会)
安全な水と安全ではない水の違い
日本の水道水は、蛇口からそのまま飲むことができる安全な水です。日本では、安全ではない水を探すほうが難しいかもしれません。
安全な水と安全ではない水とは何が違うのでしょうか。ここからは、SDGs目標6の「安全な水」について考えてみましょう。
安全な水
「安全な水」と「きれいな水」は同じ意味ではありません。見た目が透き通ったきれいな水でも目に見えない菌や汚れが含まれているかもしれないため安全な水とは呼べません。
SDGs目標6で掲げている「安全な水」は、水自体の安全性だけではなく、水を得るまでのプロセスも安全である必要があります。水自体がそのまま飲める安全な水であっても、水を汲むまでに崖を登ったり、何時間も歩かなければならなかったりする水は安全な水とは呼べないのです。
安全ではない水
安全ではない水は、汚染から守られていない水源の水です。
人間や動物の排泄物から保護される設備がない水源や地表水とよばれる川や池の水も安全ではない水に含まれます。地表水には、細菌だけでなく虫の幼虫や卵をもった虫(メジナ虫)もいます。そのまま飲んでしまえば体の中で卵がかえり、とてもつらい思いをしなければなりません。
安全な水を世界中に普及させなければならない理由
まずは世界の水事情からお話ししましょう。
2020年現在、世界の約74%の人は安全な水を利用しています。しかし残りの26%の人たちは安全な水を利用してはいません。
26%の人たちは、安全ではない水を生きるためにやむを得ず使っています。抵抗力が弱い乳幼児は、水に含まれている細菌によって下痢を引き起こし、毎日たくさんの命が奪われています。
WHOは「1km以内に1人1日20リットルの水を確保できる場所があること」を目指しています。
この基準を満たしていない場所で暮らす人たちは、生きるための水を手に入れるために遠くまで水を汲みに行く必要があります。
貧しい国では、水汲みは子どもの仕事です。水を汲みために数時間も歩き、重たい水をもって家に帰ります。
もちろん学校に行く時間も体力もありません。生活の水を運ぶために学ぶ機会と時間が奪われているのです。
発展途上国にお金やきれいな水を配ったとしても、それは一時しのぎにしかなりません。持続可能な発展をするためには、未来を担う子どもの教育が必要です。
安全な水を世界中に普及させなければならない理由は、命をつなぐだけではなく、子どもたちの未来や夢を守るためでもあります。
世界のトイレ事情
SDGs目標6は、安全な水と一緒にトイレについても触れています。実は、トイレと安全な水は切っても切れない関係にあります。
衛生的なトイレは、衛生面だけでなく人間の尊厳にもかかわることなので、急速に改善は行われています。
2000年は世界で21%の人たちが屋外で排せつをしていました。しかし2020年には6%まで改善しています。
「わずか6%」と思うかもしれません。しかし世界人口の6%は4億9,400万人にもなるのです。
屋外でなくても、バケツをトイレがわりにしていたり、排せつ物を川や池にそのまま流したりしている地域では、川や土壌が汚染されるため、生活用水や飲み水も汚染されてしまいます。
安全で衛生的なトイレが必要な理由
安全で衛生的なトイレが必要な一番の理由は、安全な水を守るためです。
排せつ物が適切に処理されるトイレでなければ、細菌が水に入り下痢や感染症を引き起こします。
実は、もうひとつ安全で衛生的なトイレが必要な理由があります。
それは学校で教育を受けるためです。水を汲むために学校に行かれない子どもたちが多いことはすでにお話ししました。しかし、なんとか学校に行くことができたとしても、安全で衛生的なトイレがないために学校に行きづらくなっている子どもがいるのです。
学校にトイレがなく、屋外で排せつしなければならなかったら子どもたちはどう思うでしょうか。
大人だって学校に行くことがつらくなるはずです。とくに女子は、人の目が届かない場所まで移動しなければならず、治安面でも心配です。
安全で衛生的なトイレが必要な理由は、感染症を防ぎ、安全な水と子どもたちの教育機会を守るためです。
安全な水とトイレは持続可能な社会をつくる
安全な水とトイレは、命をつなぐだけではなく子どもたちの未来にもつながっていることがわかりました。
さらに、安全な水を安定的に供給することができるようになれば植物を育てることができるようになり、食料やエネルギーの生産も安定します。食料やエネルギー生産の安定は、経済発展に繋がっています。
下水道まで衛生的に管理されたトイレは、海洋汚染や土壌汚染を防ぎます。海や陸で生きる生物の生態系が守られ水資源も守られます。
安全な水とトイレによって命と経済、そして生態系まで守られ持続可能な社会を実現することができるのではないでしょうか。
私たちにできること
© LIXIL Corporation.
安全な水とトイレを世界中に広げる試みは、日本の大手メーカーが率先して行動をおこしています。
LIXILは、ビル&メリンダ・ゲイツ財団の資金助成を受けて衛生的に管理されたトイレが不足している途上国向けに簡易トイレ「SATO」トイレシステムを生み出しました。
「SATO」は、すでに出荷され、衛生的なトイレを必要とするたくさんの人々の役に立っています。
衛生的なトイレは、下水道というインフラが不可欠でした。しかし途上国のほとんどは下水道がありません。
LIXILは、下水道をもたない場所でも排せつ物を衛生的に処理できるシステム「グリーントイレシステム」を開発しました。グリーントイレシステムでは、排せつ物を酵素の力で処理し、農業で使える肥料に作り替えることができます。
安全な水を守ることは私たちにもできます。水を大切に使えば、排水を処理するための電気量を減らすことができます。
電気使用量削減はCO2削減につながり森や海などの地球環境を守ることにつながっています。森は貴重な水源です。
日本で暮らす私たちひとり一人の水の使い方が、遠く離れた国の森や人々の水源に大きな影響を与えています。
世界の衛生問題「トイレ」が未来を変える|LIXIL
グローバルな衛生課題の解決|LIXIL
おわりに
国連は2030年までに淡水資源の不足が必要量の40%に達すると言っています。
11月19日は「世界トイレの日」、3月22日は「世界水の日」です。
トイレや水など当たり前にあると思っているものについて考えることも私たちにできることのひとつではないでしょうか。
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