SDGsの目標1「貧困をなくそう」実現のために知っておきたい日本と世界の貧困

クモの巣が張った枯れ木

「貧困」と聞くと、日本に住んでいるからには大丈夫、自分には関係のないことと捉えてしまうかもしれません。

しかし日本がアメリカや中国に次ぐ経済大国でありながらも、7人に1人が貧困状態であり、約9割のひとり親世帯が「苦しい」と嘆いているのが現状です。

SDGsの目標1にある「貧困をなくそう」を実現するためにまずは貧困の現状を知り、暮らしのなかで私たちになにができるのかを考えてみましょう。

SDSs「貧困をなくそう」の現状と課題

日本と世界における貧困の現状と課題、具体的な行動目標についてご紹介します。

貧困の定義とは

貧困 水たまりで食事
貧困には絶対的貧困と相対的貧困の2つの概念があります。

・絶対的貧困:人間として最低限度の生活水準に達していない状態
・相対的貧困:国や地域の平均生活水準より低い状態

絶対的貧困は、衣食住のために必要な生活物資を購入できる所得がない状態です。
2015年に世界銀行は、1日1.90ドルの所得を国際貧困ラインとしました。
しかし極貧が局地的になるにつれ国際貧困ラインの妥当性が指摘されたことで、SDGsのターゲットでは1日1.25ドル未満としています。

相対的貧困は、その国における等価可処分所得の中央値の半分(貧困線)に満たない状態であり、2018年の日本における貧困線は127万円です。
相対的貧困にあたる割合は15.4%、子どもの貧困率(17歳以下)13.5%を占め、貧困は遠い国の出来事ではないことが表れています。

世帯の可処分所得を世帯の人数の平方根で割ったもの。世帯員ごとの生活水準をより実感覚に近い状態で判断できる。

引用:国民生活基礎調査 各種世帯の所得等の状況(2019年)|厚生労働省

SDGsの目標1「貧困をなくそう」の具体的な達成目標【7つのターゲット】

SDGs1貧困をなくそう
SDGsの目標1として掲げている「貧困をなくそう」には、具体的な達成目標として7つのターゲットが示されています。
7つのターゲットをわかりやすく簡略化しました。

1.極度の貧困を終わらせる
2.貧困状態である人の割合を半減させる
3.貧困層や脆弱層の人々を保護する
4.基礎的サービスへのアクセス、財産の所有・管理の権利、金融サービスや経済的資源の平等な権利を確保する
5.貧困層や脆弱層の人々の強靭性(回復力)を構築する
a.開発途上国の貧困対策としてさまざまなな資源を動員する
b.貧困撲滅への投資拡大を支援するために政策的枠組みを構築する

算用数字で表記された1~5は、目標1の「貧困の撲滅」を実現するための具体的な「行動目標」。
アルファベットで表記されたa~bは、資金確保や投資拡大を主とした目標達成のための「手段」が示されています。

Japan SDGs Action Platform|外務省

貧困にまつわる世界の現状と課題|貧困層が5カ国に集中

2019年グローバル多次元貧困指数©国連開発計画

貧困=開発途上国のイメージがある通り、世界の貧困層のうち85%は南アジア地域やサブサハラ・アフリカ地域に分布。
世界の極度の貧困層にあたる7億3,600万人の半数はインド、ナイジェリア、コンゴ民主共和国、エチオピア、バングラデシュのわずか5カ国に集中しています。

貧困を測る指数として単なる金銭的指標ではなく、心身の健康や教育を受けられているかなど、総合的な生活状況をふまえ貧困であるかどうかを判断する「多次元貧困指数(MPI)」があります。
この指数をもとに世界の人々の生活をみると、全世界で13億人の多次元貧困層が存在し、そのうち84.5%がサハラ以南アフリカと南アジアに分布していることが判明しました。

引用:
1年を振り返って:14の図表で見る2019年|世界銀行 
グローバル多次元貧困指数|国連開発計画(UNDP)

貧困にまつわる日本の現状と課題|貧困の複雑化

世界規模で貧困層の割合をみると、東アジア・太平洋地域は6.42%と貧困層が集中する5か国と比べてわずかであると感じてしまいがちです。

日本国内における相対的貧困の割合は15.4%、子どもの貧困率(17歳以下)13.5%であり、数値だけみると深刻な問題ではないと捉えてしまいますが、実際には7人に1人の子どもが貧困状態であるといわれています。

日本の貧困は諸外国のように目に見えず、表層化しにくいのが問題視されています。
単なる経済的状況の課題以外に、衛生的な生活習慣の欠如や家庭内暴力、教育不足などさまざまな課題が複雑に絡み合っている状態です。
情報を得る機会がない・SOSを出せる状況ではないがために、福祉の手が行き届かないことも発生しています。

広報誌「厚生労働」子ども・若者の貧困には多くの「困難」が複雑に絡み合っている|厚生労働省

コロナによって富裕層と貧困層の格差が広がる

©日本経済新聞社©日本経済新聞社
新型コロナウイルスによる影響は健康だけではなく、収入・所得にも打撃を与えています。低賃金労働者ほど雇用環境の悪化による収入減の傾向がある一方、富裕層は株高の恩恵を受け富が集中。
実際にアメリカでは富裕層と貧困層の格差が広がり、深刻な社会問題としてあげられています。

さらに学歴による貧困経済格差も顕在化。
日本財団の調査によると、貧困状態の子どもの学力は10歳を境に急激に低下し、貧困世帯の学力は低位に、非困窮世帯の学力は高位に集中していくことがわかりました。
経済的な貧困状況を理由に十分な教育の機会を逃し就職する際の選択肢も限られ、貧困のループから逃れることがむずかしいのが現状です。

K字経済とは 富裕層と貧困層が二極化|日本経済新聞 
引用:家庭の経済格差と子どもの認知・非認知能力格差の関係分析|日本財団

貧困をなくす日本・世界での取り組み

SDGsの目標1を達成するために、日本や世界でおこなわれている取り組みをご紹介します。

日本政府がおこなう4つの支援

貧困層 新聞
国内で深刻化しているのがこどもや若者の貧困です。
子どもの貧困は労働問題や経済問題など親の貧困が根本にあり、双方の支援が必要。
あらゆる貧困をなくすために、日本政府おこなう取り組みは主に4つあります。

・生活支援:生活困窮者の自立支援制度、生活保護など
・就労支援:ハロートレーニング、自立支援センターなど
・教育支援:児童養護施設、給付型奨学金制度など
・経済支援:児童扶養手当の支給、養育費の相談など

なかでも困窮状態に陥りやすい、ひとり親世帯の支援が重要です。

2019年の国民生活基礎調査によると、ひとり親世帯(調査では「母子世帯」)では「生活が苦しい」と感じる割合が86.7%であり、世帯当たりの平均貯蓄額は両親・子どもありの世帯と比べ半分以下であることが判明しています。

引用:国民生活基礎調査 各種世帯の所得等の状況(2019年)|厚生労働省 

世界では児童労働対策や経済的支援をおこなう

子どもの貧困は世界規模でも大きな問題として取り上げられ、なかでも開発途上国での児童労働が問題視されています。

教育支援や経済的支援だけではなく、児童労働対策の直接的な取り組みとしてJICAは「児童労働フリーゾーン認定」を策定しました。
子どもの保護に関する条例の制定や子どもの保護委員会が設置など、さまざまな基準をクリアした地域を児童労働フリーゾーンとし、児童労働撤廃を実現しています。

先進国では子どもの貧困対策として親のサポートを強化。
単なる給付や支援だけではなく就労意識を高める制度づくりを心がけ、貧困のループからの脱却を図っています。

6月12日は児童労働反対世界デー|JICA(独)国際協力機構  
「子どもの貧困」対策先進国での取り組みとは?~イギリス編~|(公社)チャンス・フォー・チルドレン

貧困をなくすために私たちができること

おもちゃのお金 子どもの手 募金

・貧困について知る、理解する
・募金や寄付をする
・ボランティアに参加する
・フェアトレード商品を購入する

NGOや子ども食堂に寄付する、学習支援や食料支援のボランティアに参加するなどの具体的な行動だけではなく、日本と世界の貧困について知るだけでも大きな一歩です。

フェアトレード商品の購入は、立場の弱い開発途上国の人々の安定した生活・自立をサポートすることにつながります。

まとめ

世界の貧困は5カ国に集中し、貧困状況が可視化されにくい状況です。実際に貧困を遠い国の出来事として、自分ごと化しにくいと感じる方が少なくありません。

しかし金銭・食・教育などあらゆる課題が複雑に絡み合い、貧困のグレーゾーンにいる人々が多く存在しています。

募金や食料の寄付など、スーパーやコンビニでできる小さなことから始め、持続可能な未来のためにサポートしていみましょう。

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