CO2の削減目標は日本と海外で違う?企業の取り組み例や私たちにできることを紹介
地球の環境問題でメインのトピックとなるのが、温暖化の原因となっている温室効果ガス(CO2)の排出をどうやって削減するか、です。閉幕したばかりのCOP26関連ニュースでも頻繁に耳にします。
CO2が地球温暖化に関係していることはわかるけれど「なぜCO2ばかりが悪者になっているのか」「結局、世界はCO2削減にむけて何をしているのか」などわからないことがたくさんあります。
今回は「なぜCO2削減を目指しているのか」という素朴な疑問から、世界や企業が実際に行っているCO2削減の取り組みや個人でできるCO2削減の取り組みまで、わかりやすくお話しします。
CO2削減をしなければならない理由
CO2が悪者になっていることはわかるけれど、詳しいことはわからないという人が多いのではないでしょうか。実は、CO2が注目されていることには大きく2つの理由があります。
まずは「なぜCO2が削減対象となっているか」をお話ししましょう。
温室効果ガスのほとんどがCO2だから
温室効果ガスは地球の環境に悪い影響を与えます。そのため、温室効果ガス削減が叫ばれているのです。
温室効果ガスは大きく分けて5種類あります。温室効果ガスには、温暖化する能力を示した地球温暖化係数がつけられています。
地球温暖化係数は、CO2(二酸化炭素)を1として、一酸化二窒素は298、ハイドロフルオロカーボン14,800です。
なぜ、地球温暖化係数が1のCO2が、一酸化二窒素やハイドロフルオロカーボンよりも削減対象として注目されているのでしょうか。
答えは「温室効果ガスの中でCO2が一番多いから」です。
人間が出す温室効果ガスの割合は、CO2が76%(化石燃料由来65.2%と森林減少など10.8%)・メタン15.8%・一酸化二窒素6.2%・その他フロン類が2%です。圧倒的にCO2が占めています。CO2削減することこそ、温室効果ガス削減になるのです。
温室効果ガスの種類|気象庁
地球温暖化係数|神奈川県気候変動適応センター
温室効果ガスの中でCO2が一番削減しやすいから
CO2削減が叫ばれる理由は、温室効果ガスの中でもCO2が一番人間の活動によって削減しやすいからです。
メタンは稲作や牛の消化管内発酵で排出されるため、メタンを削減しようと思えば農業に影響があります。その他の温室効果ガスも削減するためのプロセスがCO2削減よりも複雑なことが多いのです。
CO2は、人間の生活によって排出される部分が大きいため、生活を変えることで削減することができます。
国別にみる2030年までのCO2削減目標
2021年4月に行われた気候サミットでは、世界中から約40か国の首脳や閣僚などが参加して気候変動について話し合いをしました。2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量ゼロ)を目指すために、各国は2030年のCO2削減目標を発表しました。
ここからは、日本とアメリカと中国の国別のCO2削減目標をみてみましょう。
日本は2013年比で46%減を目指す
日本からは菅内閣総理大臣(当時)が出席しました。
そして「2050年目標と整合的で、野心的な目標として2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指します。さらに50%の高みに向けて挑戦を続けてまいります。」と発表したのです。
2013年と比較して46%減を目指すことは、今までに発表されていた目標値26%減よりもずっとハードルを上げています。
46%減を達成するためには、省エネだけでなく再生エネルギーの活用や火力発電の効率化や休止や廃止も進めなければなりません。日本の産業構造自体が変わるともいわれています。
アメリカは2005年比で約半減を目指す
アメリカはバイデン大統領が出席しました。そして「2005年比で50%~52%減を目指す」と発表しました。アメリカは、気候サミットの主催国です。アメリカも以前の目標値であった2005年比26%~28%減からハードルをうんと上げています。バイデン大統領は、気候変動の取り組みは、雇用効果もあると発表しました。
中国はCO2排出量のピークを2030年より前にする
中国は、習近平中国国家主席が出席しました。
そして「2030年までに炭素のピークを達成し、2060年までにカーボンニュートラルを達成するよう努力する。石炭消費は14次5か年計画で厳しく制限することとし、15次5か年計画(2026-2030年)で減らしていくこととする。」と発表しました。
日本やアメリカとはちょっと違う目標の発表です。日本やアメリカなどの多くの国は2050年カーボンニュートラルを目標としています。
しかし中国は「2060年カーボンニュートラルを達成できるように努力する」としているのです。日本やアメリカと一線を画した目標の影には、経済発展と環境問題の両立の難しさが見え隠れしています。
2021年11月13日に閉幕した今回のCOP26で中国は。当初の議長案である、石炭火力の「段階的削減(phase down)」に向けた努力の加速を各国に要請するという当初文案の表現にインドとともに反発し、結果合意文書は「段階的削減(phase down)」ではなく「段階的廃止(phase out)」という表現に修正されています。
2050年カーボンニュートラルを見据えた 2030年に向けたエネルギー政策の在り方|経済産業省 資源エネルギー庁
企業や団体が実践しているCO2削減の具体例
日本が掲げた高いCO2削減目標は、企業や団体の協力が必要不可欠です。ここからは、日本の企業や団体が実際に行っているCO2削減の取り組みを紹介します。
工場の電力は太陽光発電を利用「ハウス食品」
工場で使う電気の量は膨大です。日本の発電は火力発電が大きな割合を占めています。
火力発電は燃料の量を変えることで発電量が調整できるメリットがありますが、CO2を排出するデメリットもあります。
ハウス食品では、静岡工場の屋根に約5,000枚の太陽光パネルを設置して発電しています。発電量は年間で1,477千kwhとなり、CO2削減に大きく貢献しています。
また、国内の工場や事務所で使用している冷凍機やエアコンは、温室効果係数の低い設備に置き換えるように取り組んでいます。
次世代車で環境負荷軽減を目指す「日野自動車」
©日野自動車株式会社
自動車はCO2削減の大きなハードルと考えらえていました。しかし、日野自動車は技術でCO2削減に取り組んでいます。
「日野環境チャレンジ2050」と名付けてCOP21で掲げられた目標「地球平均気温上昇を2℃以内に抑える」達成に向けて具体的な取り組みをしています。
例えば、プラグインハイブリッド車や電気自動車や燃料電池自動車のようなCO2削減に貢献する次世代車の普及を目指しています。
冬に降った雪を冷房にする「北海道士幌町」
北海道の冬は雪がたくさん降ります。降り積もった雪は厄介者として扱われてきました。その雪を北海道士幌町では夏の冷房に活用しています。
「ゆきんこ冷房システムプロジェクト」と名付けられた取り組みは、地域の特性を生かしたCO2削減策として環境省「環境と経済の好循環のまちモデル事業」の支援を受けています。
個人でできるCO2削減の具体例
CO2は、人間の生活によって排出されています。私たちひとり一人にもCO2削減を目指して取り組めることがあります。
現在1人1日当たりのCO2排出量は6kgです。生活を見直すことで1人1日当たり1kg削減できるといわれています。
お風呂の入り方を変える
水を温めるときには、たくさんのCO2を排出しています。お風呂はお湯をたくさん使うためCO2の排出量は増えがちです。
シャワーを使わずに、湯船にためたお湯で体や髪を洗えば371gのCO2削減になります。4人家族が好きなタイミングでお風呂に入れば、長時間にわたってお風呂を保温しておかなければならず、CO2排出量は増えてしまいます。できるだけ家族が続けてお風呂に入るようにするだけでも86gのCO2削減になります。
自動車の乗り方を変える
自動車は、乗り方を変えるだけでCO2削減が可能です。ゆるやかな発進と加速を減らすだけで280gのCO2削減になります。
休日しか自動車に乗らない人は、カーシェアリングに変えると180gのCO2削減になります。自動車の乗り方を変えることは、環境にも家計にもやさしくなるのではないでしょうか。
家電の使い方を変える
電気は、発電によって作られます。電気をたくさん使えばたくさんの電気を作らなければならず、CO2の排出量は増えます。
家電は、私たちの生活を便利にする欠かせないものです。便利な生活を持続可能なものにするためにもCO2をできるだけ排出しない家電の使い方が求められています。
冷房や暖房の設定温度に気をつければ約90gのCO2削減です。お風呂と同じように炊飯ジャーの保温時間を削減すれば37gのCO2削減になります。
おわりに
CO2削減は、ひとり一人の行動でできることです。
上記に紹介した具体例のいくつかを組み合わせるだけで1kg近いCO2削減になります。2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、今できることに挑戦してみてはいかがでしょうか。
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