SDGs未来都市とは?日本の持続可能な社会のモデルとなる自治体も紹介
SDGs未来都市と聞くと、車が空を飛んでいるような未来の架空都市を連想するかもしれません。
しかしSDGs未来都市は、架空の都市ではありません。SDGs未来都市は、未来のためにできることを現実に始めている都市です。
今回は、SDGs未来都市をわかりやすく解説します。
SDGs未来都市とは
SDGsとは、Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略です。2015年に国連で決まった17の目標で2030年達成を目指しています。
SDGs未来都市は、日本でのSDGs構築を目的として始まった取り組みです。SDGs未来都市は、2018年から募集が行われ、毎年30都市(都道府県・市区町村)ほどが選ばれます。内閣府地方創生推進室が申請受付から選定までを担当しています。
応募には、SDGsが掲げる17の目標の中から複数を選び、具体的にその目標達成に向けて取り組むことが求められます。自治体の担当者は、将来のビジョンや資金、取り組み内容をまとめて期日までに提出する必要があります。申請された内容を精査し、SDGs未来都市が決定します。
SDGsの目標を達成するためには、国だけでなく自治体も率先して取り組む必要があります。自治体のSDGsへの積極的な参加を促すため、そして国が支援して成功実績を出すために2018年からSDGs未来都市の選定が始まったのです。
SDGs未来都市は、SDGsに基づいていることが特徴ですが、SDGs未来都市が始まる以前から日本では持続可能な社会「地方創生」の取り組みとして「環境モデル都市」「環境未来都市」を選定しています。
環境モデル都市
2008年に始まった環境モデル都市は、温室効果ガスを削減し、低炭素化社会に向けて取り組んでいると認められた都市です。SDGsという幅広い目標に取り組むSDGs未来都市とは異なり、低炭素がポイントになっています。
環境未来都市
環境未来都市とは、高齢化社会など多くの国や自治体が抱える問題に対し、環境と社会と経済の3つのポイントをおさえて「誰もが暮らしたい町」「誰もが活力ある町」の実現にむけて取り組んでいると認められた都市です。
2050年には65歳以上の高齢者が国民の37.7%以上(国土交通省:「2050年の国土に係る状況変化」より)になるといわれています。人口が都市に集中するのではなく、地方都市でも幸せに暮らせる環境づくりをするためにも環境未来都市は注目されています。
環境未来都市をさらに発展させてSDGsの目標まで取り込んだものがSDGs未来都市です。
SDGs未来都市に選ばれる自治体のメリット
SDGs未来都市は、国が勝手に指名するものではありません。自治体が申請書を提出することが第一歩になります。つまり「私の町はSDGs未来都市としてSDGsに積極的に取り組みます」と自ら手を上げることがスタートです。
そこまでするメリットは何なのでしょうか。ここからは、SDGs未来都市に選ばれる自治体のメリットについてお話しします。
地方創生のチャンスになる
SDGs未来都市に選ばれると、計画を実行に移すための助言を各省庁から受けることができます。また、小さな地方都市はSDGs未来都市の成功事例として取り上げられれば、魅力的な地方として注目されるチャンスにも恵まれるのではないでしょうか。
地方創生は、大きな課題ではありますが地方だけでは発信に限界があります。SDGs未来都市に選定されれば、発信支援もしてもらえるため大きなチャンスになるのです。
補助金がもらえる
SDGs未来都市の中から、さらに優れた10事業が「SDGsモデル事業」に選ばれます。SDGsモデル事業に選ばれると補助金が支給されます。SDGsモデル事業に選ばれなかったとしても、SDGs未来都市に選ばれれば地方創生推進交付金の弾力的な措置の対象になります。
地方都市は「SDGsにむけて動きたい」と思っても予算が足りないこともあります。SDGs未来都市に選ばれることで、経済的なメリットもあるのです。
SDGs未来都市に選ばれた自治体の一例
SDGs未来都市は、2024年までに累計210都市を選ぶとされています(内閣府官房・内閣府総合サイト地方創生「2021年度SDGs未来都市等選定に係るQA」1-1より)。ここからは、今までにSDGs未来都市に選ばれた多くの自治体の中から、特徴ある3つの自治体をピックアップして紹介します。
内閣府官房・内閣府総合サイト地方創生「2021年度SDGs未来都市等選定に係るQA」1-1
東京都江戸川区
©江戸川区
東京都江戸川区は、2021年度SDGs未来都市に選ばれたばかりです。SDGsの17個の目標の中から多くの目標達成を目指しています。
中でも目標3「すべての人に健康と福祉を」と目標11「住み続けられるまちづくりを」と目標13「気候変動に具体的な対策を」の3つの目標に関連させた「水害があっても誰一人取り残さないまち」は、江戸川区ならではの取り組みです。
なぜならば、江戸川区は東京都でありながら海抜ゼロ地域だからです。
江戸川区は江戸川と荒川にはさまれた土地で、大きな水害がおこれば江戸川区のほぼすべてが浸水すると予想されています。江戸川区の人口は70万人です。すべての人をすみやかに避難させることは簡単なことではありません。
しかし、江戸川区は「災害がおこったとき」を想定してSDGsのポイントである「誰一人取り残さない案」を提案しました。具体的には、災害時に弱者になりやすい障害者や要介護者に対して事前に避難する場所を指定する取り組みです。
水害時は「どこに非難すべきか」と悩んでいる時間がありません。事前に避難場所を指定しておくことで、災害弱者も取り残さない速やかな避難を実施することができるでしょう。
水害は、気候変動とも関係しています。江戸川区は、2021年4月に気候変動適応センターを設置し情報収集や発信にも力を入れています。
沖縄県恩納村
©HAPPY WOMAN実行委員会
沖縄県恩納村は、2019年にSDGs未来都市とSDGs推進未来都市モデル事業に選ばれました。恩納村は、海がきれいなところです。
しかし、少子高齢化が課題となっていました。そこで恩納村は、観光資源である「サンゴ」をいかした未来都市計画を打ち出したのです。
サンゴは、地球温暖化の影響を大きく受けています。サンゴを保護することは、地球温暖化対策をすることでもあるのです。
具体的には、サンゴの歌やキャラクターを作ってサンゴの魅力を発信、サンゴの知識普及、サンゴにやさしい生活様式の提案などです。サンゴという自然環境を守りながら、観光資源としても活用することで少子高齢化対策につなげています。
神奈川県横浜市
©横浜市
神奈川県横浜市は2018年にSDGs未来都市に選ばれました。横浜市は、日本国内だけでなく外国人も多く暮らす町です。
さらに人口が多く、人々の暮らしと自然環境との共存も重要なテーマです。横浜市は、SDGsの17個の目標をできるだけ多く達成できるようにさまざまな側面からアプローチした未来都市計画が特徴です。
横浜市は、文字を読むことが大変な外国人や子どもにもわかりやすいように動画を制作しました。動画の中には、横浜市が取り組む「多様性」「共存」「環境対策」がさりげなく盛り込まれています。
横浜市の未来都市計画の特徴は、「SDGs目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」に取り組んでいることです。海外とのつながりが強い横浜市だから取り上げることができたのかもしれません。
具体的には「ヨコハマSDGsデザインセンター」を立ち上げ、市民や事業者、金融機関など、今までは関係が薄かったグループをつなげる取り組みを始めました。
SDGs未来都市が必要な理由
未来都市の目的は「経済」「社会」「環境」の課題解決と新しい価値創造といわれています。
目的は抽象的ですが、SDGs未来都市が必要な理由はもっとシンプルなのかもしれません。「SDGsの取り組みを地方から始めて成功実績を作ろう。そして地方から元気になろう」ということだと思わされます。
SDGsの17の目標は、日本の目標である地方創生にもつながっています。「SDGs未来都市」は、その地域の特徴や個性をみつけ出して活かし、未来に向かって動き出すきっかけになります。それこそが「SDGs未来都市が必要な理由」なのではないでしょうか。
地方が元気になれば地方に人が集まります。地方に若い人が集まれば少子高齢化対策になります。
少子高齢化は、日本だけでなくアジア全体が抱える課題です。日本が成功実績を作ることは、アジア全体の少子高齢化の基盤を作ることでもあります。
おわりに
SDGs未来都市は、都道府県だけでなく小さな町や村も自分事として地域の未来を考えるきっかけになります。地球の未来は、小さな地域の未来の集まりです。
自分が暮らしている町が、どのようにSDGsに取り組んでいるのか調べてみると新たな魅力に気がつくかもしれません。
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