環境問題を実例を交えて解説|3つのプロセスと9種類の影響とは?
環境問題とは、地球の生物や環境の破壊につながる問題です。
環境問題として注目されるときには、すでにたくさんの被害が出ています。今現在も環境問題は人間だけでなく地球上に生きる多くの生物の命や生活を脅かしています。
今回は、環境問題が発生するプロセスから実例までをわかりやすく解説します。
環境問題は3つのプロセス「起・転・結」でできている
環境問題は、いきなり生物の命や環境破壊が起きるのではなく、プロセスを経て恐ろしい環境問題になります。
最初は、環境問題の原因となる「起」です。そして、さまざまな場所に影響が出る「転」となります。悪い影響が続けば、いよいよ環境問題となり「結」をむかえるのです。
汚染と破壊
環境問題の原因にあたる「起」は、汚染と破壊です。汚染とは、そこにあってはいけないものが入り込み、よくない影響を引き起こすことです。破壊は、そこにあるべきものが壊されることです。
汚染の問題点は、汚染によって生物が生きるために必要なものがなくなったり、減ったりすることで命が脅かされることです。汚染源が点ですぐに判明すればいいのですが、汚染源が面に広がっていたり特定できなかったりする場合は対処が遅れて被害が大きくなります。
破壊の問題点は、破壊によってあるべきものがなくなることです。あるべきものは、役割があります。役割を果たすものがなくなってしまうと、遅かれ早かれ「ひずみ」が出てきます。
減少と不足
汚染と破壊が続くと「転」である減少と不足が始まります。汚染が続けば汚染の原因となった汚染物質が生物の成長を妨げます。
生きられる命が減れば、生物は減少します。人間を含めるすべての生物は、さまざまな命や資源を取り込みながら生きています。
生物が減少すれば、生きるための糧が不足していくのです。
変動と災害
減少と不足が大きくなれば変動と災害を引き起こします。まさに変動と災害は環境問題であり、3つのプロセスの「結」なのです。
減少と不足に耐えられなくなった環境は、状況に応じた変化をします。規模が大きい環境の変化は変動と呼ばれます。そして、大きすぎる変動は災害につながります。
人間は、災害となってわが身に降りかかったとき、初めて「環境問題」と呼び、事の大きさに気がつくのです。「結」をむかえる前の「転」「起」の段階で環境問題の芽に気がつき対処することが求められています。
3つの環境問題のプロセスの例
環境問題には3つのプロセス「起・転・結」があります。ここからは、それぞれのプロセスの具体例を挙げて解説します。
汚染と破壊は大気汚染・海洋汚染・森林破壊
大気汚染は、大気の中にあってはいけない物質が入り込んだ汚染です。
日本は、全発電電力のうち約75%を火力発電で発電しています。火力発電は、たくさんの電気が作れる一方、硫黄酸化物や窒素酸化物を大気中に放出します。硫黄酸化物や窒素酸化物は、大気中で硫酸や硝酸に変化します。
それらの有害物質が溶けた雨が酸性雨です。酸性雨は酸度が高いため、森林に降れば木々を枯らします。森林破壊になるのです。森林破壊は酸性雨も原因のひとつですが、過剰な森林伐採も森林破壊の原因です。
海洋汚染は、海に汚染物質が流れ出ることから始まります。農薬などの化学物質が流れ出ることもあれば、ビニル袋などのゴミが海に入って長い時間をかけて汚染することもあります。
減少と不足はオゾン層減少・漁獲量減少・森林の減少
汚染と破壊が進めば減少と不足が始まります。
海は多少の汚染ならばプランクトンの働きにより環境問題にまでは発展しません。しかし、プランクトンの働き以上の汚染が続けば海洋汚染が始まります。
海洋汚染は魚の生命を脅かし漁獲量を減少させます。実は適度な漁は海の環境を守るために必要なことです。漁をすることで魚の世代交代と成長を促します。
食物連鎖によって大きな魚に取り込まれた窒素やリンを漁によって再び陸に回収する役割もあるのです。漁獲量の減少は、人間が食べる食料が減るだけでなく、海の環境悪化にもつながっています。
大気汚染といえば、PM2.5や酸性雨のように有害物質がそのまま降ってくるイメージがあるかもしれません。しかし地球上から出された物質の中には、すぐに降らずにオゾン層まで到達するものもあります。フロンは、オゾン層まで届いてオゾン層減少をまねきます。
変動は気候変動・自然災害そして人々の争い
減少と不足は、変動と災害をもたらします。
オゾン層減少は太陽からの紫外線をそのまま地球上に降らせることになり気候変動の始まりに寄与します。
気候変動による気温上昇は自然災害である森林火災を発生させて森林を減少させます。森林が減少すれば砂漠化が始まり、砂漠の砂は黄砂になって再び大気を汚染するのです。
気温上昇は水不足の原因にもなっています。気温上昇によって氷河が溶けたため、氷河から溶け出した水を生活用水にしていた人々は、すでに水不足に悩まされています。
水不足は人類の歴史を振り返っても人々の争いの引き金になっています。我田引水という言葉は、まさに水の争いがもとになった言葉です。
気候変動により氷河が溶けだし海面上昇がおこったり気温が耐えられないほどに上昇したりすれば、地球上で生物が暮らせる場所は限られてくるでしょう。水だけでなく土地の争いが始まるかもしれません。
実際におきている環境問題の実例
台風やハリケーンが強くなっている
気候変動はすでに始まり、環境問題になっています。
IPCC(「気候変動に関する政府間パネル)は、第三次報告書で「中・高緯度域の大部分、特に北半球において、年総降水量に占める大雨や極端な降水現象による降水量の割合が増えつつある可能性が高い」と発表しています。気温上昇が台風やハリケーンの個数を増やすとはいえませんが、21世紀末には最大風速が45mを超えるような熱帯低気圧が増加するという研究結果が出ています。
国土交通省白書: コラム・事例 地球温暖化と大雨、台風の関係|国土交通省
たくさんの生物が減少・絶滅している
生物多様性という言葉があります。「仲良く」「思いやり」というソフトな印象がある言葉ですが、実はとても現実的で合理的な意味があります。
2004年のスマトラ沖地震は、生物多様性が守られていたことで被害を小さくすることができたといわれています。
スマトラ沖は、マングローブ林やサンゴ礁がありました。そのため、大きな津波がきてもエネルギーを吸収することができたのです。
しかし今は気候変動によってたくさんの生物が減少し絶滅しています。生物多様性の豊かさを表す指標であるLPIは、1970年から68%も減っています。
生物多様性とは?その重要性と保全について|WWFジャパン
生物多様性に豊かさを表す指標(LPIについて):
過去50年で生物多様性は68%減少 地球の生命の未来を決める2020年からの行動変革|WWFジャパン
環境問題の例からわかる2つのポイント
環境問題はいくつものプロセスや原因が関係している
環境問題は、地球温暖化や大気汚染、海洋汚染や森林破壊のように細かく分類されています。しかし「起・転・結」の順を追って考えてみると、どの環境問題をとってもただひとつの分類で始まり終わっているものはありません。
大気汚染は森林破壊をまねき、森林破壊は地球温暖化につながっています。そして地球温暖化は、大気汚染や森林破壊そして生物の多様性にも影響を与えているのです。
環境問題は人間の活動によって引き起こされていた
IPCCが最新の報告書で「地球温暖化の原因が人間の活動にある」と断言したことが話題になっています。たしかに海洋汚染は人間が捨てたプラスチックゴミが原因であり、地球温暖化は人間の便利な生活によって排出されたフロンガスが原因です。
環境問題の原因「起」である「汚染と破壊」は人間の活動によって始まっています。
IPCCとは
IPCC第5次評価報告書 第3業部会(WG3)(2014)|全国地球温暖化防止活動推進センター
IPCC第6次評価報告書 第1業部会(WG1)(2021)政策決定者向け要約(SPM)の概要(ヘッドライン・ステートメント)|環境省
IPCC 第6次評価報告書 第1業部会(WG1)報告書 気候変動 2021:自然科学的根拠 政策決定者向け要約』暫定訳(2021/9/1付)|国土交通省 気象庁
環境問題に対してひとり一人ができること
環境問題に対してひとり一人ができることは、自分の便利な生活が地球の環境に与える影響を意識することではないでしょうか。意識すれば行動は変わります。
「自分には関係ない」と思っていたなにげない行動が環境問題の「起」になり、「転」「結」と続くのです。
おわりに
環境問題は、陸だけでなく海にも空にもあります。そしてそれらは単体ではなく、すべてつながっているのです。
陸の上での便利な生活が、どのようにして海や空の環境問題につながっているのかを考え「起」を食い止めることが私たちひとり一人にできる環境問題の取り組みです。
この記事へのコメントはありません。