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最新:「2025年再配達率7.5%」に向けた置き配や宅配ボックスの役割とは?

大量のトラック

物流のラストマイルでの再配達率の削減には、置き配の利用拡大が効果的であることが証明されつつあり、今後さらに置き配の利用が拡大すれば、継続的な再配達率削減につながる可能性が高いです。一方、国土交通省が今年6月に発刊した2021年度〜2025年度までの「総合物流施策大綱」では、2025年の再配達率の削減目標を7.5%程度としています。
今回は、最新の再配達率に関する動向とともに、5年後の再配達率7%台の可能性について、OKIPPA利用者のアンケートも踏まえてみていきます。

最新の再配達率サンプル調査結果と2025年度目標

2021年4月度の宅配便の再配達率のサンプル調査の結果が6月25日に公表されました。(*1) 2018年10月より、毎年4月と10月に定期的に調査されています。

一方、Yper社でも、2018年9月のOKIPPAバッグ発売以降、置き配バッグ「OKIPPA」のOKIPPAアプリ利用者の再配達率を毎月調査しており、国交省のサンプル調査と比較して常時3~5ポイントほど低い水準で推移しています。今年6月に国交省では、2021年度〜2025年度の「総合物流施策大綱」を発刊しており、その中で宅配便の再配達率の目標値を2020年度で10%程度、2025年で7.5%程度と新たな目標が設定されました(*2)

新型コロナウイルス感染症の流行が始まった2020年春から、国交省サンプル調査での再配達率は、2020年4月度に一時、8.5%(OKIPPA利用者の同時期再配達率は6.4%)まで低下しました。ただ、こちらの数値に関しては、国交省も都市部での緊急事態宣言下による在宅率の上昇など特殊要因によることが大きいと言及しています。

2021年7月現在、東京オリンピックを間近に控え、東京では4度目の緊急事態宣言が発令されますが、再配達率は2020年4月度を下限に再度上昇し、現状は11%程度と2020年度の目標値を上回る状況になっています。ただ、コロナ前の再配達率と比較して4ポイントほど低い水準をキープしているのは、これまで再配達率になる確率が高いEC利用頻度が高いと言われる30〜40代の単身、共働き層でのテレワークの利用の定着と、通販サイト利用率が伸びる中でも「置き配を選択できる環境」の拡大が影響していると考えられます。今後、ワクチン接種が進み、さらにコロナが収束した後であっても、テレワークの習慣や通販サイトでの置き配などの選択肢の実装拡大が継続された場合、2025年に向けてさらに再配達率は下がる可能性はあります。

一方、OKIPPAアプリ利用者の再配達率は最新の6月末時点で7.9%と、すでに国交省の2025年度目標値に近い値になっており、OKIPPAアプリ利用者荷物受け取り環境および行動から、2025年度の再配達率7%台へのヒントも見えてくる可能性があります。

(*1)宅配便の再配達率は約 11.2%(国土交通省)
(*2)総合物流施策大綱P37

再配達率7.9%の消費者行動とは?

今回、OKIPPAアプリ利用者の中から526名の利用者へアンケート調査を実施しました。

OKIPPAアプリ利用者の中心は、30代〜50代の単身・共働き世帯で、アプリ利用者の中でのOKIPPAバッグの利用率は92.4%となっています。OKIPPAバッグを利用していない方は宅配ボックスがないか、集合宅配ボックス等を利用しながらOKIPPAアプリを利用している方です。
図2|OKIPPAアプリ利用者グラフ|年代性別住居形態

日用品の購入頻度

コロナ前後の消費行動の変化として、2020年4月以降で通販サイトでの日用品の購入頻度が増加したと回答した利用者は約6割にのぼり、減少したと回答した方はいませんでした。こうした状況は、巣ごもり消費等による通販需要の拡大として総合物流施策大綱内でも記載されています。(*3)
図3|OKIPPAアプリ利用者グラフ|日用品の購入頻度

荷物の受け取り方法(外出時・在宅時)

OKIPPAアプリ利用者の、外出時と在宅時の受け取り方法を比較しました。
外出時は、ほとんどがOKIPPAを含む宅配ボックスや置き配などの非対面での荷物受け取りを実施していることがわかります。在宅時には約半数が、在宅であっても対面やインターホン応答での置き配ではなく、OKIPPAや置き配など、完全非対面での荷物受け取り方法を選択しているのがわかります。

従来、宅配ボックスや置き配は外出時の対策として考えられていましたが、コロナ禍で在宅時の受け取り手段としても認知され、新たな生活様式として定着していることが伺えます。
図4グラフ|OKIPPAアプリ利用者|外出時の荷物受け取り方法

図5グラフ|OKIPPAアプリ利用者|在宅時の荷物受け取り方法

非対面で荷物を受け取っている理由

また、OKIPPAや置き配等の非対面での受け取りを実施する理由で一番多かった意見は「再配達を申し訳なく思うため」でした。OKIPPAアプリ利用者のうち全体の約7割が週一回以上通販サイトで物品購入をする「通販ヘビーユーザー」であり、購入頻度が多い分、特に配送員負荷を申し訳なく思う気持ちが発生しやすいと考えられます。

一方、約3割ほどはコロナウイルス感染症対策として自分や家族、そして配送員の安心安全のために非対面受け取りをするといった結果になっています。
図6グラフ|OKIPPAアプリ利用者|非対面で荷物を受け取りを行う理由
(3)総合物流施策大綱 P3

再配達率7.9%の発生要因とは?

OKIPPAアプリ利用者の最新の再配達7.9%は、国交省のサンプル調査の再配達率より低いとはいえ、再配達がゼロになっているわけではありません。この辺の理由を探ることで、2025年に7%台まで削減するヒントがありそうです。

再配達になってしまう理由

アンケート調査の結果では、OKIPPAバッグや宅配ボックスが満杯と言った、1日に複数個の荷物を受け取る際に再配達になっていることがわかりました

ついで、書留等の対面が必須な荷物の受け取り時や、クール便の受け取り時がそれぞれ3割ほど発生しています。では、解消法はあるのでしょうか。
図7グラフ|OKIPPAアプリ利用者|再配達になるケース.jpg

宅配ボックスが満杯・1日に受け取る荷物が複数

まず、宅配ボックスが満杯で再配達になってしまうケースでは、OKIPPAバッグに関してはあらかじめ複数個を用意するか、事前に受け取りの日付を異なるものにすることで対処できる可能性はあります。

また、マンション1Fの集合宅配ロッカーの場合には、慣例的に、宅配ボックスのボックス数は総戸数の2〜3割程度に設定されることが多くなっており、こちらは10年以上前から基準が変わっていません。ただ、今後はコロナ禍での通販利用率の増加も考慮して、各住戸前に戸別の専有宅配ボックスを設けるなど、戸数分の宅配ボックス環境を標準設備とすることも考えられます。
マンション群
最近は、新築分譲マンションの場合において、玄関横に宅配物の受け取りにも利用可能な戸別ストレージスペースを売りにする物件も増えています。ただ、一般的には建設コストやスペースの制約が大きいため、玄関前にビルトイン式の宅配ボックスが設けることが難しい物件が大半で、その場合にはOKIPPAバッグなどの後付けの戸別宅配ボックスの玄関口への設置や、ガスメーターボックスの空きスペースの活用など、玄関口でスペースの確保を試みる物件が増加しています。

最近では、オートロックマンションでの各スマートロックメーカーによる共用エントランスの解錠やAmazonによるKey for Businessの無償提供が全国的に急速な広がりを見せており、オートロックマンションでも不在時に玄関前で荷物が受け取れる環境を整えることが可能になっています。

対面が必須な荷物・クール便の受け取り時

書留等の本人確認や対面受け取りが必要な荷物に関しては、原則、置き配やOKIPPAのような簡易宅配ボックスでは受け取りが難しいですが、日本郵便の場合、アンカー固定式などの専有宅配ボックスであれば「申請書」を出すことにより受け取りが可能になります。書留等での再配達が多く発生する場合には、手続きをすることをお勧めします。
※日本郵便の「置き配」について:日本郵便HP

そして、冷蔵・冷凍品に関しては、集合宅配ボックスでは冷蔵品の受け取りが可能なモデルも市販されてはいますが、コストの面からも導入は一部の分譲仕様マンションに限られている状況です。生鮮食品の”置き配”に関しては、生協などの定期配送で発砲スチロールに蓄冷剤やドライアイスを入れて対応するのが代表的な事例となっていますが、今回取り上げた再配達率に関係するような一般の宅配物での対応は進んでいません。

食品の輸送

食品の輸送に関しては、日本でも衛生管理を世界水準までに引き上げるとの動きから、食品衛生法の改正により、2020年6月1日から食品を取り扱う事業者全てに対してHACCPに沿った衛生管理の義務化が開始され、1年間の猶予期間を経た、今年6月からHACCP導入および運用が完全義務化となりました(*4)
これにより、今後、食品の置き配や宅配ボックス預入に関しても10℃以下に一定時間保てる環境を求められるなど、一般宅配物の非対面での受け渡しに関してもより厳格な温度管理が求められる可能性も考えられます。
(*4)厚生労働省HP

これから置き配・宅配ボックスの普及方法は?

ドットエスティ画面
(© Adastria Co., Ltd.)
今回のアンケートでは、回答者の92%がOKIPPAバッグ利用者となっていたことからもOKIPPAのような簡易宅配ボックスも含め、宅配ボックスが普及すると再配達率7%台が可能になることがわかります。ただ、国内の全戸に宅配ボックスを設置する必要はありません。

OKIPPAバッグの利用者は約7割が通販ヘビー利用者であることは上記でお伝えしましたが、現在そうした再配達になってしまう確率が高い荷物受け取り層にのみ宅配ボックス環境を整備できれば、再配達率は効率的に削減することが可能です。

国交省の再配達サンプル調査は、配送大手3社の数値を集計したものであり、現在もっとも置き配導入が進んでいるAmazon社の自社配送の再配達率は反映されていません。ヤマト運輸は、国内の配送会社で唯一、置き配向けの運送約款を制定しており(詳細は以下の記事を参照ください)、2021年7月時点で、同社の置き配サービス(EAZY)を導入している荷主は11社/サイトと、大手3社の中で一番荷主への導入が進んでいます。


EAZYを導入した.st(アダストリア)では、導入後数ヶ月で再配達率が50%削減されるなど導入直後から大きな効果が現れており、(*5)置き配を積極的に利用していく意向や土壌があることが私たち消費者にもわかります。今後は、再配達率削減のためには、こうした荷主側への置き配選択肢の実装をどのようにして迅速に整備できるかが重要になってきます。
(*5)ヤマト運輸HP

まとめ

2025年に再配達率を7.5%まで削減することが目標となったことで、今後、具体的な施策に関しても社会実装が進むものと思われます。置き配や宅配ボックスの普及が再配達率の削減に直結することは明白ですが、冷蔵・冷凍品への対応など、5年後までに検討すべき課題も明らかになっており、官民協力のもとで対策を検討することが望まれます。

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