賃貸物件の宅配ボックス設置率は?都内でコロナ前後を比較して検証

2021年10月に緊急事態宣言が解除されました。
新型コロナウイルス感染は第6波の懸念はあるものの、国内では9月末時点で必要回数以上の新型コロナワクチンの接種完了者は人口の6割を超え、1日あたりの感染者数も大幅に減少しています。皆さんは、コロナ禍で大きな変化が起こったものとして何を思い浮かべますか?

コロナ感染を受けた外出規制を機に、通販での日用品購入を始められた方も多いと思いますが、今回はそんな通販生活に欠かせない宅配ボックスの設置率をコロナ前後で比較してみます。

※本文章では2019年4月以前を「コロナ前」、それ以降を「コロナ後」と表現しています。

2021年7月に経産省より発表された2020年度の物販系ECの伸長率は21.71%と非常に高い伸びを示しています(*) 。また、8月に国交省より発表された2020年度の宅配物取扱量も48億個突破と、EC化率の急伸に伴い前年比で11.9%増加しており、コロナ禍で通販利用者が一気に増加したことがわかります。緊急事態宣言の解除とともに今後、市街地の店舗や観光地には人出が戻る期待がある一方、コロナ禍で利便性が際立った通販での商品購入は、今後も高い利用率を維持していくと考えられています。

そうなると、外出時の荷物受け取り機会は以前にも増して増加し、宅配ボックス付きの物件の需要がより高くなりそうですよね。ということで、今回は都内23区の宅配ボックス付き賃貸物件がどれくらいあるのか調べてみました。
宅配ボックス前 荷物
2018年8月にも都内23区の宅配ボックス付き物件を調査しており、今回(2021年9月調べ)は第2弾になります。
(2018年の記事はこちら

前回同様に、調査は賃貸物件に限定し、をCHINTAIネット(株式会社CHINTAI運営)でから実際に検索した情報を元に設置率を算出しました。

東京23区とは、下記の地域を指します。
【東京23区】
千代田区 / 中央区 / 港区 / 新宿区 / 文京区 / 台東区 / 墨田区 / 江東区 / 品川区 / 目黒区 / 大田区 / 世田谷区 / 渋谷区 / 中野区 / 杉並区 / 豊島区 / 北区 / 荒川区 / 板橋区 / 練馬区 / 足立区 / 葛飾区 / 江戸川区

今回(2021年9月24日)の調査結果と前回(2018年8月16日時点)の結果を比較すると、なんと検索物件数自体が約2倍になっていました(CHINTAIの物件掲載数も増えてる!)。今回の調査は、まず「東京23区内」の「賃貸マンション・アパート」に限定し、築年数については「30年以内」に絞って見ていきました。

コロナ前後比較:宅配ボックスあり物件の宅配ボックス設置率(築年数別)

表1には、築年数ごとの物件数を「宅配ボックス」の指定ありと指定なしでまとめて、設置率を比較しています。

(表1)コロナ前後比較:宅配ボックスあり物件の割合(築年数別)
<訂正とおわび>発表当初上記グラフタイトルを「宅配ボックスあり物件の宅配ボックス設置率(築年数別)」と記載していましたが、ただしくは「宅配ボックスあり物件の割合(築年数別)」です。おわびして訂正いたします。
(表1)コロナ前後比較:宅配ボックスあり物件の宅配ボックス設置率(築年数別)

前回、築1年以内の物件は宅配ボックス設置率が71.69%だったのに対し、今回の調査では2020年9月以降竣工した築1年以内(2020年10月〜2021年9月)の物件での宅配ボックス設置率は87.64%、築年数3年以内でも84.31%と大きく伸びており、コロナ禍で竣工した物件では、そのほとんどに宅配ボックスが設置されていることがわかります。

コロナ前後比較:宅配ボックスあり物件の宅配ボックス設置率(詳細築年数別)

一方、もう少し細かく築年数別に見ていくと(表2)となり、やはり築年数3年以内の物件での宅配ボックス設置率は20ポイント近く増加しており、他の年代と比較して伸びが際立っています。また築20年以上の物件でも増加傾向が見られました。

(表2)コロナ前後比較:宅配ボックスあり物件の割合(詳細築年数別)
<訂正とおわび>発表当初上記グラフタイトルを「宅配ボックスあり物件の宅配ボックス設置率(詳細築年数別)」と記載していましたが、ただしくは「宅配ボックスあり物件の割合(詳細築年数別)」です。おわびして訂正いたします。
(表2)コロナ前後比較:宅配ボックスあり物件の宅配ボックス設置率(詳細築年数別)

次に、家賃別の宅配ボックス設置率の比較を行いました。こちらも2018年に調査をしており(当時の記事はこちら)、前回の調査は2018年10月4日に実施しています。

コロナ前後比較:宅配ボックスあり物件の宅配ボックス設置率(家賃別)

まずは、全体を見てみると(表3)、設置率が10ポイント以上増加しているのは、10万円以上の物件であることがわかります。こちらも、もう少し細かく見てみましょう。

(表3)コロナ前後比較:宅配ボックスあり物件の割合(家賃別)
<訂正とおわび>発表当初上記グラフタイトルを「宅配ボックスあり物件の宅配ボックス設置率(家賃別)」と記載していましたが、ただしくは「宅配ボックスあり物件の割合(家賃別)」です。おわびして訂正いたします。
(表3)コロナ前後比較:宅配ボックスあり物件の宅配ボックス設置率(家賃別)

コロナ前後比較:宅配ボックスあり物件の宅配ボックス設置率(家賃価格帯別)

表4は、家賃の価格帯別の宅配ボックス設置率の比較表です。こちらを見ると家賃10万円〜14万円の価格帯の物件で、宅配ボックスの設置率が20ポイント以上増加しています。16万円以上になると元々設置率は7割以上と他の価格帯に比べて高い水準にありましたが、コロナ後の設置率は8割を超えており、宅配ボックスがほぼ標準設備になっていることがうかがえます。

(表4)コロナ前後比較:宅配ボックスあり物件の割合(家賃価格帯別)
<訂正とおわび>発表当初上記グラフタイトルを「宅配ボックスあり物件の宅配ボックス設置率(家賃価格帯別)」と記載していましたが、ただしくは「宅配ボックスあり物件の割合(家賃価格帯別)」です。おわびして訂正いたします。
(表4)コロナ前後比較:宅配ボックスあり物件の宅配ボックス設置率(家賃価格帯別)

まとめ

コロナ前後で、賃貸物件宅配ボックス設置率は全体的に増加傾向にありますが、特に家賃10万円以上の物件で増加、また、築3年以内のコロナ禍で竣工した物件では、コロナ前と比較して宅配ボックスの設置率が大きく増加していました。

今後もコロナだけでなく、高いEC化率を背景に宅配ボックスの設置は増加すると見込まれますが、家賃10万円以下の物件や築年数が5年以上の物件では、コロナ後も依然として設置率は50%程度にとどまっているのも事実です。

そうした物件では、コロナ禍で定着した置き配の利用や、利用したい人だけ個別に利用できる宅配ボックス環境や、より手軽に利用できる簡易宅配ボックスなどをうまく利用することが望まれます。

(*) 経済産業省 電子商取引に関する市場調査

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