サステナブルとSDGsの関係性とは?日本の「三方よし」との類似点も解説
(SDGs 5, SDGs 8, SDGs 10, SDGs 11)
誰もが同じように幸せを感じながら暮らせて、それが長く続く社会。
実現できたら、どんなに素敵なことでしょう。
国連が2015年9月に採択したSDGs(Sustainable Development Goals)は、世界の国々で協力しながら、そういった社会を作っていこうという取り組みです。
世界を変えるための17の目標と、それを達成するための169のターゲット(小目標)を設定して、地域ごとに達成度や進捗状況をスコア化し管理しています。
このようにお伝えすると、きっと、
「SDGsって難しいよね」
とか、
「国が取り組んでいるならわたしたちには関係ない」
と考える人もいるでしょう。
しかし、ちょっと視点を変えてみると、国を形作っているのは、市町村で暮らしている私たち一人ひとりです。
つまり、わたしたちの日常が、世界を変えるための可能性を秘めています。
ちょっとだけ普段の生活に気を配るだけで、簡単に実現に向けてできることがたくさんあります。
SDGsは決して難しくない、わたしたちの日常の延長線上にあるものだと、この記事でわずかでも気付いていただけたら幸いです。
おおざっぱにいうと「SDGs」って何?
SDGsは、17個の多様な目標に分かれているため、一口に説明できるほど単純な話ではありません。しかし、幸運なことに、日本にはSDGsの理解を助ける「三方よし」という考え方があります。そこから理解を広げていくと、分かりやすいかもしれません。
近江商人の「三方よし」
SDGsとして設定されている目標は、貧困・健康問題・各種不平等の解消・環境保護など、実に多岐にわたります。
そのため、一つひとつを徹底して理解しようとすることはもちろん、包括的に解決しようと試みるのもたいへん難しいことです。
厳格な身分制度があった時代や、災害や飢饉に見舞われた時代が長かった日本もまた、例外ではありません。
しかし、それらの問題を個人単位から解決するアプローチとして、日本では画期的な精神が育まれました。
それが、近江商人の「三方よし」の精神です。
現在の滋賀県に本店を置いた近江商人は、江戸から明治にかけて日本各地で活躍したといわれています。
商人たちは、商売をする上で信用を得るために、
・買い手よし
・売り手よし
・世間よし
という3つのポイントを重視していました。
自らの利益を求めず、ただただ多くの人に喜ばれる商品を売り続けて、近江商人たちはどんどん信用を獲得していきました。
また、利益が貯まれば無償で橋・学校を建てるなど、世間に対して還元することを忘れなかったそうです。
近江商人たちは、自らの利益をのみを追求するのでなく、商売相手の事だけでもなく、もっと広大な視点、つまり社会の幸せを願うという視点から「持続可能(サステナブル)な商売」について考えていたわけですね。
これは後に日本の経営哲学の代表例となっています。
この考え方は、全世界を幸せにするためのSDGsの目標と類似点が多く、売り手・買い手・世間のすべてが世界の当事者であることを示しています。
経済産業省が取りまとめた「SDGs経営ガイド」の中でも、三方よしの精神が取り上げられており、三方よしは日本人が長年にわたり培ってきた知的財産とも言えるかもしれません。
わたしたちは、売り手?買い手?それとも世間?
三方よしの考え方は、基本的に近江商人の立場で考えたことが精神として受け継がれているので、一般人がどういった立場で応用して考えるべきなのか、イメージしにくい人もいるかもしれません。
自分が何かを提供するのか、それとも提供されるのか、あるいは第三者的な立場なのかによって、振る舞いも変わって来るでしょう。
何かを提案する・会社で働く状況であれば立場は「売り手」になるでしょうし、ドラッグストアやスーパーなどで商品を選んで買うなら「買い手」になります。
募金箱に100円玉を入れたなら、その時のあなたは「世間」になるはずです。
つまり、日常生活を送る中で、一人一人がいずれかの立場で社会と接しています。
さらに、現代ではSNS等の新しいツールが普及したことにより、世間の評判がより速くダイレクトに広まりやすくなっており、わたしたちの「買い手」としての立場は特に重要になってきています。
三方よしとSDGsの繋がり
ここまでで、「三方よし」の考え方は身近に感じられましたでしょうか?
一人一人の日常生活での行動が社会とつながっており、「三方よし」に基づいた考え方は、SDGsのそれぞれの目標を達成する上で重要な要素になっています。
例えば、世界や日本で起こる出来事の中で、明らかに買い手・世間にネガティブな影響を与えている企業があったとします。
そこで、個人としてそういった企業の利益に加担しない(買わない・すすめない)スタンスを決めるだけでも、SDGsの観点から貢献できるのです。
以下に、世界や日本で起こっている出来事を紐解きながら、どうしてわたしたちがSDGsを理解する必要があるのか、一緒に考えて行きましょう。
世界のできごと(どの目標分野の事例?)
世界のアパレル産業を支えるバングラデシュでは2013年、倒壊のおそれがあるビル内の縫製工場で働かされていた労働者たちが、ビルの崩落により尊い命を失いました。(*1)
従業員は、壁や柱のヒビから倒壊するおそれのあることが分かっていて、警察も退去命令を出していたにもかかわらず、強権的なオーナーが解雇をちらつかせて労働者を働かせていたそうです。
こういった事件が世界中で起これば、その恩恵を受けていた国や企業が仕事を円滑に進められなくなり、やがて世界中の株主や顧客も離れてしまうでしょう。
すなわち、買い手が離れ、世間が悪評を流すのは必然です。
ちなみにこのことは、SDGsで8番の目標「働きがいも経済成長も」、目標10番「人や国の不平等をなくそう」などに該当する問題です。
自国以外の国・地域の問題が、将来的に他国の人々にも影響を及ぼすことを想像できない・理解し得ない人々が、残念ながら世界には数多く存在しています。
わたしたちが買い手として商品を選ぶ際に、誰かの命や生活を犠牲にするようなメーカー・企業を支持しないことが、SDGsの達成につながっていくのです。
日本のできごと(どの目標分野の事例?)
経済的には豊かな国のひとつにカテゴライズされる日本ですが、一方で根深い人権問題や貧困問題があり、日本もまたSDGsに関しては対岸の火事とは言えない状況になっています。
一例として、女性や子どもに関する人権問題は、セクハラ・マタハラ・虐待などといった形で日本でも問題となっており、特にジェンダーギャップの面では世界各国に比べて大幅に遅れをとっています。
世界経済フォーラムが国別に男女格差を数値化した「ジェンダーギャップ指数2021」によると、日本は世界156ヶ国中120位という結果となっています。(*2)
企業が発信する広告の中には、諸々の理由から表現を誤り、時に炎上という形で世間に厳しくジャッジされるものもあります。
この問題の解決はSDGsの目標の5番の「ジェンダー平等を実現しよう」という目標に向けた改善の取り組みとなります。
また、日本は先進国の中でも相対的貧困率が高い傾向にあり、グローバルノート社が世界主要国の貧困率をまとめた2020年の統計では、42ヶ国中15位(15.7%)という結果が出ています。(*3)
相対的貧困とは、その国の文化水準・生活水準と比較して困窮した状態を指しており、相対的貧困の状態におちいった家庭では、以下のような問題が生じやすくなります。
・親が病気になったら、子どもが家事をしたり働いたりしなければならない
・十分な食費がなく、母親・子どもの食事がおろそかになる
・高校や大学へ進学できるお金を工面できない
・自己否定感にさいなまれ、学校・家庭・部活などに居場所がなくなる
そのような状況だからこそ、日本で生活する私たちは今こそ三方よしの精神に思いをはせ、一人ひとりが「誰かのためにできることは何か」を考える必要があります。
誰かに対して「それは違う」と声をあげるだけでなく、より積極的に世の中を生きやすい・過ごしやすいように変えていくための決断・アイデアが、わたしたち一人ひとりに求められているのです。
ただ、わたしたちがすべきことは、決して難しいことばかりではありません。
ボランティア・寄付という活動に足を踏み入れずとも、普段の「ちょっとした心がけ・思いやり」によって、少しずつ世の中を便利に・快適にすることができます。
わたしたちの生活は、今まで通りこれからも続いていく?
普段、わたしたちは他社が提供する商品・サービスの恩恵を受けながら暮らしています。
それは概ね便利・快適で、そのことに疑問を抱かず暮らしている人も多いはずです。
しかし、利用者にとって便利・快適な商品やサービスの裏で、つらい思いをしている人が一定数存在していることも事実です。
例えば、宅配便の荷物の再配達は、非常に大きなストレスと時間的負担を配送員の方に与えます。
もし、仕事に嫌気が差した配送員の多くが仕事を辞めてしてしまったら、将来的にわたしたちは自分の手の届く範囲でしか買い物ができなくなるかもしれません。
そんな未来を迎えないために、ここでは配送員の心理について、少しだけ想像を広げてみましょう。
外出しなくても生活が成り立つのはなぜ?
わたしたちが、普段外出しなくても日々の生活を成り立たせることができるのは、わたしたちの代わりに動いている人・働いてくれている人がいるからです。
特に、新型コロナ禍でニーズが大幅に増え、厳しいスケジュールの中で動き回る宅配便の配送員は、人知れずつらい戦いを強いられています。
宅配便の配送員は、荷物の多さ・再配達問題・高層階への配達など、一人で様々な条件をクリアしながら、わたしたちに荷物を届けてくれます。
毎日100個以上の荷物をさばき、訪問時に住人がいなければ夕方以降にあらためて再配達し、エレベーターがないアパートの最上階まで10kg以上の荷物を運ぶことも珍しくありません。2020年5月には配送荷物量増加し、一人250個を配達という記事も見られました。(*4)
帰宅が遅くなれば、その分だけ翌日の仕事にも影響が出ますし、家庭を持っている方なら家族のこともおろそかにできません。
経済的な事由から仕事を選んだ人なら、再配達依頼を少なくして、もっと多くの荷物を運びたいと考えているかもしれません。
新型コロナ禍によって、働き続けてきた職場を失った結果、生活のため配送員になった人もいるでしょう。
配送員の皆さんにも、わたしたちと同じようにそれぞれの生活・人生がありますから、スムーズな配達に協力できることがあれば協力したいと考えるのが自然ですよね。
とはいえ、わたしたちの中にも、仕事や家庭の都合でどうしても家を空けざるを得ない生活をしている人は多いはずです。
その上で、配送員の負担を少しでも減らせる方法があるとしたら、どのような方法が考えられるでしょうか。
小さな心遣いが、他の誰かを支えている
おそらく、賢明な読者の皆さんなら「再配達の数を減らす」ための方法について、考えを巡らせたのではないでしょうか。
買い手の立場で再配達の数を減らそうと考えるなら、答えはとてもかんたんで「配送員ががチャイムを鳴らした時に住人が応答する」ことで解決できます。
一方で、住環境によっては、チャイムが鳴った時に相手の顔を確認できないケースもあります。
新型コロナ禍ではマスクを着用している配送員も多いため、顔から不審な点を判別できず、女性の一人暮らしだと「応答するのが怖い」と感じてしまう人もいると思います。また赤ちゃんがちょうど寝ついたばかりであったり、ちょうど重要な用事の最中であったり、はたまた、テレワークでのオンライン会議の真っ最中など、新しい生活様式の定着による理由もあると思います。
そのため、居留守を使う人を一方的に悪いと断じることは望ましくありません。誰もが安心してサービスを受けられるような「アイデア」が必要です。
そこで生まれたのが、宅配ボックスなや置き配専用バッグなど、配送員が荷物を気兼ねせず玄関先に設置する方法です。
特に置き配専用バッグは、宅配ボックスに比べて安価であるため比較的手軽に設置でき、OKIPPAのように折りたためる構造であれば目立ちにく、また鍵もついているので、荷物を盗まれるリスクを減らすことにもつながります。
置き配専用バッグを設置するだけで、配送員と顧客の両方の問題が解決してしまう。
物事の見方を少し変えるだけで、こういった問題解決方法は、きっとたくさん見つかるはずです。
生活の「三方よし」を考える
世の中の問題の多くは、自分たちが意識する・しないにかかわらず、何らかの因果関係によって引き起こされています。
配送員と再配達の問題を再度例にあげると、再配達問題の解消は、売り手と買い手の間の問題を解決するだけの話にとどまらず、より多くの問題を解決してくれる側面を持っています。
玄関まで運ばれたはずの荷物が倉庫に戻る数は毎日200万個・再配達で生まれる無駄なCO2の量は毎日702tともいわれていますが、置き配バッグなどの設備が普及すれば、それらの無駄を削減することにつながるのです。
このことから、近江商人が提唱した三方よしの精神は、日々の生活の中でも十分に実践できることが分かります。
さて、あなたができることは、何でしょう?
あなたができることは?
置き配に限った話ではなく、誰もが誰かのために・世の中のためにできることがあります。
画期的な発明をするとか、世の中の秘密を解き明かすとか、難解なイメージを持つ必要はまったくありません。
少しでも身の回りの人が喜んでくれる・嬉しい気持ちになるだけでも。人間が行動を起こす価値はあります。
家族に笑顔で接する時間を増やす・一人で過ごしているクラスメイトに声をかけてみる・休日に自宅の周りを清掃するだけでも、誰かに行動で貢献していると言えますよね。
例えば、家族との関係性がよい状態で維持されていれば、仕事や勉強のパフォーマンスが向上したり、周囲の人間関係を円滑なものにしたりできるかもしれません。
転校してきたばかりのクラスメイトに声をかけたことで、やがて生涯にわたる親友ができ、自分がつらい時に助けてくれる人が増えるかもしれません。
休日に自宅の周りを清掃していると、次第に近所の人と話をする機会が増えて、有益な情報が集まるようになるかもしれません。
自分のためにまずできることから、そして社会のためになる
ちょっとしたことかもしれませんが、これらはすべてSDGsの目標を達成することに貢献できる可能性を秘めています。
行動に伴う当事者間の短期的なメリットだけでなく、その行動が生む精神的な心境の変化によって、自分が暮らす世の中が変わってしまうことも十分考えられるのです。
家族の人間関係を穏やかなものにすることは、例えば目標5「ジェンダー平等を実現しよう」を家庭で・目標8「働きがいも経済成長も」を職場で実現することにつながっていきます。
一人ぼっちのクラスメイトに声をかけることは、例えば目標10「人や国の不平等をなくそう」を、学校内で達成するチャンスとなるでしょう。
近所の人と話をする時間が増えれば、災害が起こった時に協力体制を築きやすくなり、結果的に目標11「住み続けられるまちづくりを」を達成することになるはずです。
パートナーシップ→みんなでやるのがSDGs
もし、世界中の人たちが、自分と同じように「誰かのために・少しだけ」行動を起こした場合、78億人以上の人の力が集まることになります。
自分一人にとってはちょっとしたことでも、同じことをする人数が増えれば、その分だけできることが増えていくのです。
SDGsというのは、そういった行動を、みんなで起こそうという取り組みだと考えると分かりやすいかもしれません。
国や企業に期待するのではなく、自分が主体的に考え・選び・行動する中で共感してくれる人を探し出すことが、SDGsを達成するための重要なアプローチになります。
サステナビリティ
SDGsに向けた取り組みを理解する上で、もう一つ大切なことがあります。
それは、単に「ゴールを達成するだけで終わらない」ことです。
次の世代・また次の世代も、誰もが地球上で生活を継続できるよう、サステナビリティ(持続可能性)を意識した取り組みが求められます。
あらゆる場面で無理なく実践できるよう、様々な取り組みの仕組み化が求められると言えるでしょう。
先にご紹介しした置き配バッグは、出かける前にただ玄関にバッグを設置するだけでできる取り組みで、しかも様々な分野に貢献できる点で高いサステナビリティを実現しています。
わたしたちも、普段の心がけを通して「もっと良い世界にしたい」と思う気持ちが生まれたら、食事・ファッション・ライフスタイルなど、様々な観点からできることがあるはずです。
「わたしのことだった」と気付いたら、今すぐ何か始めてみよう
SDGsと聞いて、どこか手をこまねいていた・動くことに抵抗を感じていた人は、きっと「わたしのことでもあるんだ」と納得できたのではないかと思います。
大丈夫、そのことに気付いた瞬間に、わたしたちの世界は広がっていきます。
普段から通販を利用する機会が多い人は、これを機に置き配の意思を今よりも少しだけでもいいので積極的に伝えるだけで、環境保護と配送員の生活を楽にすることに貢献しています。
周囲との距離を縮めようと話しかける勇気を持つことも、誰かのためにささやかな行動を起こすことも、長い目で見て世の中を変えるきっかけになっていきます。
当サイト・ラストマイルライフスタイルでは、今後も「がんばらなくてもできるサステナブル」を、様々な観点から発信していきますので、気軽にアクセスして欲しいと思います。
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