食品ロスの日本の現状とは?世界との違いから原因・取り組みまでを解説

和食朝食

日本で発生する食品ロスの量や、削減のためにどのような取り組みがおこなわれているのかを知ると、日常生活で実現できる食品ロス削減アクションが増えていきます。

この記事では日本で発生する食品ロスの大きな原因や、国や自治体、企業が実践している取り組みをご紹介。

何気なく手にしている食品は知らず知らずのうちに変化を遂げ、家での食品ロス削減につながっています。

日本の食品ロス量

まずは日本で発生する食品ロスの具体的な量について知りましょう。

減少傾向にあるもののSDGs達成にはほど遠い

SDGs ranking 2020
2021年4月27日に発表された2012~2018年度の「食品廃棄物等及び食品ロスの発生量の推計値」をみると、事業系食品ロスと家庭系食品ロスのどちらも減少傾向にあります。

しかし推移値のデータはあくまでも目安であり、備蓄食料の廃棄分や生産調整によってなくなる食材は不透明なままです。

また165カ国のSDGsに関連する取り組みを分析した報告書によると、SDGs達成度ランキングにおける日本の順位は17位から18位に低下。
目標15(陸の豊かさも守ろう)の進捗が後退しています。

日本はほかの国と比べゴミの焼却割合が突出して高く、リサイクル率が低い状況です。
日本が掲げる温室効果ガス削減目標である「2030年度46%削減」を達成するには、発生してしまった食品ロスの資源化や、再利用化の仕組みなどの対策・改善が急がれます。

SDGs達成度ランキング|サステナブル・ブランド
我が国の食品廃棄物等及び食品ロスの発生量の推計値(平成30年度)|環境省
世界のゴミ焼却ランキング

日本で発生する食品ロスが多い原因とは

日本では年々だんだんと食品ロス量が減っているものの、依然として年間600万トンもの“もったいない”が発生しています。

2021年現在、なぜ日本では膨大な食品が廃棄されているのでしょうか?
考えられる3つの大きな原因をご紹介します。

食品流通世界の「3分の1ルール」や厳しい食品の外見的基準

曲がったきゅうり
製造~小売、外食段階で発生する食品ロスを「事業系食品ロス」といいます。
日本の食品流通世界では「3分の1ルール」と呼ばれる商慣習が存在し、賞味期限までの期間のうち3分の1が過ぎる前にスーパーやコンビニなどの小売店に納品する必要があります。

賞味期間のうち3分の1以内で納品できない食品は廃棄されてしまう、厳しい納品期限が事業系食品ロスを増やす原因のひとつです。

またいびつな形や割れ・欠けなど、見た目による影響で市場に出回らない野菜や果物があり、加工処理されない食材は廃棄されてしまいます。

食品ロスが発生しやすい企業の商習慣の見直し|資源・リサイクル促進センター

災害やパンデミックの発生

閉店したレストラン
災害やパンデミックにより食品ロスが増える場合もあります。
日本では新型コロナウイルスの影響を受け需給バランスが崩れ、小売店が抱える過剰在庫や飲食店での仕込み・発注ロス、販路を失った生産者など、食に携わる多くの方が打撃を受けました。

いたみやすい生鮮食品は特に食品ロスが増えやすい傾向にあります。
コロナ禍による巣ごもり需要で供給が増え、売上につながるものの、その分食品ロス発生の確率が高まる可能性も。
飲食店の営業時間短縮による発注量減、不透明具合も食品ロスを生み出す原因です。

新型コロナウイルス感染症による食品ロス発生量への影響|農林水産省

各家庭の食品ロスに対する取り組み不足

家庭での調理や食事、買い物の際に食品ロスを意識する機会があるものの、具体的な行動につながっていないことも。
賞味期限切れ前に食べる、買いすぎないようにする、食べきれる量を調理するなど、食品ロス削減のファーストステップで止まっており、さらに一歩進んだ取り組みが実践できていない家庭が多いのが現状です。

なぜなら私たちの日常生活では食品ロス問題に触れる機会が少なく、知識や具体的な取り組みを知る情報源に自らアクセスする必要があるから。
フードシェアリングアプリやフードドライブなどの取り組みがおこなわれているにもかかわらず、知る機会がないために家庭での取り組みレベルが向上しないのが課題としてあげられます。

食品ロス削減に関する意識調査報告|公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会

【2021】食品ロス削減に関する日本での取り組み

2021年現在おこなわれている日本での取り組みをご紹介します。

商慣習の見直し

スーパー食品陳列
3分の1ルールと呼ばれる厳しい納品期限を見直し、2分の1に緩和する取り組みがおこなわれています。
納品期限の緩和により製造から小売店への納品期間が延長され、食品ロス量が減少。
推定では4万トンの飲料廃棄削減、0.1トンの菓子廃棄削減につながります。

2020年10月30日時点で納品期限緩和または緩和予定の小売事業者は142事業者あり、さらに拡大する見込みです。

食品ロスが発生しやすい企業の商習慣の見直し|資源・リサイクル促進センター
食品ロス削減に向けた商慣習見直しに取り組む事業者の公表|農林水産省

容器包装の工夫

野菜売り場
家庭内での食品ロス削減につながるよう、容器包装を工夫するメーカーが増えています。

・従来ボトルのパウチ化や二重構造により賞味期限を延長
・特殊フィルムを使い野菜や果物の鮮度をキープ
・パッケージ内に空気を含むことで潰れによる食品ロスを削減

上記はほんの一部であり、私たちが普段何気なく手にしている商品のパッケージにはさまざまな工夫が施されています。

食品ロスの削減に資する容器包装の高機能化事例集<第二版>|農林水産省

日本企業の工夫

食品ロス削減やSDGs達成のために、さまざまな取り組みがおこなわれています。
2021年にスタートした各企業の取り組みの一部をみてみましょう。

ネスレ日本:賞味期限が近い飲料や菓子を自販機で安く販売
ローソン:状況に応じてAIが値引き額を算出・推奨
パナソニック:冷蔵庫内の在庫情報をアプリで確認し計画的な買い物を手助けする

食品ロス削減に取り組むのは食品業界だけではなく、家電業界や販路拡大を後押しする鉄道業界、システム開発により効率的な削減をサポートするIT業界など、あらゆる角度から課題解決を目指しています。

まとめ

お持ち帰り容器
年間600万トンもの食品ロスが発生する日本では、単に「食べ物を捨ててしまうのはダメだ!」というメッセージを投げかける・受け取るだけではなく、どのような取り組みがおこなわれ、何ができるのかを考えるのが大切です。

私たちができる身近な工夫といえば「ドギーバッグ」
日本のレストランで、余った食べ物を持ち帰るのはちょっと恥ずかしいと感じる方々は少なくありません。
しかし現在は、お店側が持ち帰りを推奨し、タブレットで簡単に注文できたりもするので、意外とハードルは高くありませんよ。

もったいない食べ物を減らせるよう便利なサービスを活用し、食品ロスのアクションを当たり前のこととして取り組んでいきましょう。

あわせて読みたい

  1. この記事へのコメントはありません。