気候変動の影響|未来の日本や世界の自然と暮らしに及ぼす変化や被害とは?
気候変動の影響は日本だけではなく、地球全体の課題として問題視されています。
こうした問題から2015年に世界各国による国際交渉が進められて「パリ協定」が採択されたことで、日本でも2018年12月4日に「気候変動適応法」が施行されました。
つい先日気候変動に関する報告が発表され、気温上昇スピードが加速しているというニュースを目にされた方も多いかと思います。
気候変動の影響は、具体的にどのような影響があるのでしょうか?
今回は、現在すでに日本で起こっている気候変動の影響と未来の影響、そして世界的にみた影響についてわかりやすく解説していきます。
気候変動による影響はどのようなものがあるの?
産業革命以降、石油や石炭などの化石燃料を燃やすことでエネルギーを取り出すようになり、生活の利便性が向上した一方で、大気中の二酸化炭素(CO2)濃度上昇など様々な要因が複雑に絡み合うことで、気候変動による影響が年々大きくなっています。
今後、気候変動の影響は私たちの生活にどのような影響を与えるのでしょうか?
ここからはわかりやすく気候変動の影響を解説していきます。
1.気温の上昇
世界の平均地上気温は、1850〜1900年と2003〜2012年を比較すると0.78℃上昇、1880~2012年の期間だと0.85℃上昇しています。
今から約60年後の21世紀末(2081〜2100年)までに、さらに0.3〜4.8℃上昇すると予測されており、ほとんどの陸域で極端な高温がより頻繁になることで、「激暑」として観測地点で40℃を超える猛暑日が当たり前になると予測されています。
今年8月9日に、世界中の科学者や専門家から構成される地球温暖化(気候変動)研究のための国連内組織、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が発表した最新の報告書では、2011~2020年ですでに約1.09℃上昇していることが発表されました。
激暑によって熱中症で倒れる人が増加する他に、農作物への影響なども懸念されています。
※参考
IPCCとは
IPCC第5次評価報告書 第3業部会(WG3)(2014)|全国地球温暖化防止活動推進センター
IPCC第6次評価報告書 第1業部会(WG1)(2021)政策決定者向け要約(SPM)の概要(ヘッドライン・ステートメント)-暫定版-
地球温暖化の原因は人間の活動と初めて断定 国連IPCCが報告書|NHKに NEWS WEB
2.短時間豪雨の頻発
現在、約30年前と比べて短時間強雨や局所豪雨の発生件数が約1.4倍となっており、短時間豪雨については2012年以降全国の3割の地点で1時間あたりの降雨量が観測史上最大を更新しています。
今後気候変動の影響を受け続けると、1時間降雨量50mm以上の発生回数が2倍以上に増加することが予測されており、2021年7月に静岡県熱海市で発生した「伊豆山土砂災害」の規模の大規模災害が頻発することが懸念されています。
また、今後気候変動の影響を受け続けると局所豪雨も短時間豪雨ともに発生回数が増加する予測です。
大気のパターンが増加する兆候はないと考えられていますが、流入水蒸気量の増加によって総降雨量が増加することが予測されています。
これらの予測によって、現在起こっている災害よりも大規模で深刻な災害が発生する可能性が高くなります。
3.猛烈な台風の出現頻度の増加
2016年8月に3つの台風が北海道に上陸。2013年11月には中心気圧895hPa、最大瞬間風速90m/sの「スーパー台風」によって、フィリピンで甚大な被害が発生しました。
このまま気候変動の影響を受ければ、日本の南海上において猛烈な台風の出現頻度が増加し、台風の通過経路が北上する予測です。
猛烈な台風の出現頻度が増加することで、台風による様々な被害がより多くなると考えられており、インフラ・ライフラインへの被害、土砂災害、住宅への被害など様々な被害が今以上に起こる予想です。
※参考
気候変動の影響について|厚生労働省
「おしえて!地球温暖化」|環境省
気候変動が続くことの世界的な影響は?
ここまで気候変動の影響による日本での現状と影響についてお話ししてきましたが、世界的にはどのような影響を受けるのでしょうか?
ここからは気候変動による世界的な影響を解説していきます。
水の問題
海面が上昇する
暮らしのための水がなくなる
洪水が起きる
災害が増える
過去100年間で平均海水水面は16dm以上上昇しており、近年のほうがより上昇率が高くなっています。
© National Institute for Environmental Studies
世界人口の1/6の人々が氷河や雪解け水から生活用水を得ており、海面が上昇することで生活用水の確保が難しくなる他に、小さな島国では国土全体が海に沈んでしまう危険性があります。
また、氷河が溶けてしまうということは大規模な洪水をはじめとする災害が起こる危険性が高まります。
特に山岳地帯では氷河湖ができ、それが決壊することで世界の大河川の源流にある山岳地帯は氷がなくなることで水不足に陥ります。
自然への影響
絶滅する生き物が増える
生態系が変化する
森林火災が増える
湿地の自然がなくなる
水族館や動物園で愛くるしい姿をみせてくれるホッキョクグマをはじめ、1,750種以上の野生動物が気候変動の影響によって絶滅の恐れがあると言われています。
気候変動の影響は、これまでの歴史にはないスピードで進行しています。
また生育に適した気温や降水量の地で育つ植物は、気温や降水量が変化することで生育地域を変更する必要が出てきます。
変化できる動植物は生態系を変化させ、変化できない動植物は絶滅していく可能性があり、これは地上の動植物に限らず、海の生態系にも大きな影響があると言われています。
また陸地の乾燥化が進むことで森林火災が増え、野生動植物の生息地が広く失われる可能性があります。
暮らしへの被害
干ばつ
病気や飢餓の増加
異常気象の増加
乾燥地域では土壌水分が減少することで、干ばつに見舞われる農地が増加する可能性が高いと言われており、農作物の種類やその生産方法を変える必要性が出てきます。
中には農作物の種類や生産方法を変えることができず、生産性が下がってしまうことも考えられています。
生産性が下がることで、満足な食料を食べられずに病気にかかる人が多くなり、飢餓状態に陥る人々や地域が現在よりも広く増える可能性があります。
先ほど気候変動の影響で動植物や海の生態系が失われる危険性があるとお話ししましたが、これは私たち人間にも大きな影響があります。
気候変動による異常気象は、熱波や洪水・森林火災などの自然災害が頻繁に起こることで、被害を受ける人が現在よりも増えることが考えられています。
※参考
地球温暖化が進むとどうなる?その影響は?|WWF JAPAN
「2100年 未来の天気予報 夏」(2019年7月配信)|環境省 COOLCHOICE
「2050年の天気予報」(2014年9月配信)|世界気象機関(WMO)
まとめ
日本では、すでに気候変動の影響で大雨や洪水・大型台風の上陸など異常な状況が頻発しています。
世界的に見ても海面が上昇することで動植物の住処が失われ、生息地の環境が大きく変動することで変化に対応できない動植物・海の生態の絶滅が危惧されています。
こうした背景を受け、2015年に世界各国による国際交渉が進められて「パリ協定」が採択、日本も締結国として世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力を追求することに合意し、2018年12月に「気候変動適応法」が施行されました。
「昔はこんなに暑くなかった」「昔はこんなに災害が多くなかった」と感じている方が多いということは、今から10〜20年前と比べて気候変動の影響が現れるようになっているということではないでしょうか。
ある程度の気候変動の影響を避けることができないと言われていますが、気候変動の影響により引き起こされる現象に対応する手段を取ることで、影響が軽減されることがわかっています。
私たち人間の活動が招いた気候変動による気温上昇を、私たちが食い止めるために、大きな原因の一つである温室効果ガスの排出量を削減する努力はもちろん、これから起こる影響に対応する準備も同時に行ってかなければならないといえるでしょう。
※参考
「IPCC 1.5℃ 特別報告書」 ハンドブック|IGES 公財)地球環境戦略研究機関
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