カーボンプライシングは4種類!メリットとデメリットや生活への影響とは?
地球温暖化に関する言葉がたくさん登場しています。「カーボンプライシング」も地球温暖化に関する言葉です。
しかし二酸化炭素やプラゴミのように具体的なイメージがわきにくい言葉かもしれません。
今回は「カーボンプライシング」の意味から私たちの生活に与える影響までをわかりやすく解説します。
カーボンプライシングとは
カーボンプライシングのカーボンは炭素を意味し、プライシングは値段をつけることを意味しています。
つまり、カーボンプライシングとは「炭素に値段をつけること」です。とはいっても「二酸化炭素に値段をつけて売ってしまおう」ということではありません。
カーボンプライシングは「2050年のカーボンニュートラルを実現するため」に考えられた策です。
カーボンプライシングには、二酸化炭素を排出した量に応じて金銭的なコスト負担をすることで、企業や家庭からの二酸化炭素排出量を削減する目的があります。
排出された二酸化炭素の量は、石炭や石油などの消費量をもとにして算出します。
カーボンプライシングの種類
カーボンプライシングには大きく分けて4つの種類があります。名前の通り値段をつけるものもあれば、排出量に応じて税金を課すものもあります。
ここからは、それぞれの特徴について解説します。
炭素税
炭素税は、排出された二酸化炭素にかかる税金です。
日本では2012年に導入された地球温暖化対策税が実質的な炭素税にあたります。日本では、二酸化炭素1トンにつき289円を企業が負担し、年間約2,500億円の税収になっています。
炭素税のメリットは、1トン当たりの課税額が明確なため、企業は予算を組みやすくなります。デメリットは、たくさん二酸化炭素を排出する企業は税の負担が大きくなってしまうでしょう。
国内排出量取引
国内排出量取引は、排出量取引制度ともいわれます。企業などが排出できる二酸化炭素の量の上限を決めます。
上限を超えてしまった企業は、上限に達していない企業から残りの排出可能量を買いとることができるのです。
日本では、東京都や埼玉県で実際に運用されています。
国内排出量取引のメリットは、たくさん排出する企業と少しだけ排出する企業が企業間でバランスをとるため、国全体の二酸化炭素排出量のコントロールがしやすいことです。
デメリットは「上限までは排出してもいい」と考えることもできることです。日本は2050年に脱炭素を目指しています。
「上限までは排出してもいい」と考えてしまっては、脱炭素への道のりが長くなってしまうかもしれません。
排出量取引制度(キャップ&トレード)とは?|国際環境経済研究所
炭素国境調整措置
炭素国境調整措置は、炭素税や国内排出量取引とは違い国と国とのやりとりです。
輸入品に対して製造過程で排出された二酸化炭素量に応じた課税をします。アメリカのバイデン大統領が選挙公約にしたことで注目されました。
メリットは、地球規模で二酸化炭素に取り組めることです。デメリットは、経済成長中で経済を優先させたい国にとっては経済的な負担になることでしょう。
クレジット取引
クレジット取引はやや複雑です。
まず、二酸化炭素削減をしている企業に対して「この企業は二酸化炭素削減を本当にやっています」というクレジットを発行します。クレジットを発行された企業は、そのクレジットを販売することができるのです。
クレジット取引は「カーボンニュートラル」の考え方に基づいてできた策です。
カーボンニュートラルは、まったく二酸化炭素を排出しないということではなく「出した分だけ吸収することでプラスマイナスゼロにします」ということです。
クレジット取引は、クレジットを売る側だけでなく、「買う側にも排出した二酸化炭素をプラスマイナスゼロにする」という側面があります。
クレジット取引のメリットは、企業の経済的な負担が少ないことです。デメリットは、国内排出量取引のように「クレジットを買えばいい」と思ってしまい、二酸化炭素削減の動きが鈍化する可能性を高めてしまうことでしょう。
カーボンプライシングのメリットとデメリット
カーボンプライシングは、二酸化炭素を削減するためにはとてもメリットがある策です。しかし、効果的な策にもデメリットはあります。
ここからは、さまざまな立場からカーボンプライシングのメリットとデメリットについて考えてみましょう。
メリット
カーボンプライシングは、二酸化炭素削減を目指す立場の人からみれば現実的でメリットが大きい策です。
二酸化炭素に税をかける炭素税は「二酸化炭素排出にはお金がかかる」という意識を持たせることができます。国内排出量取引も、二酸化炭素排出量が少ない企業にとっては思わぬ収入になるかもしれません。
カーボンプライシングは「地球のために二酸化炭素を減らそう」と心に訴えかけるだけでなく、お金を動かすことでより現実的に二酸化炭素削減に向けた動きを進めることができます。
デメリット
デメリットは、二酸化炭素排出量を減らすことで経済的な発展が鈍ってしまう可能性があることです。産業を活発に動かせば二酸化炭素の排出量はどうしても増えてしまいます。
国内排出量取引のように上限を決めるときには、公平性が求められます。
特定の企業が得をして、特定の企業の負担が大きくならないように上限や税率を決めなければならない難しさがあります。経済的な発展と地球温暖化問題のバランスをとることはとても難しいことです。
カーボンプライシングが私たちの生活に与える影響
カーボンプライシングは二酸化炭素排出量を計測できる大きな企業や団体に関係があることで、私たち個人には関係のないことと感じるかもしれません。しかし、カーボンプライシングは、私たちの生活に大きな影響を与えます。
カーボンプライシングによって「二酸化炭素を出すためにお金がかかる」となれば、経費がかさむことになります。製品を作るための経費は製品の値上げとなって私たちに降りかかってくるのです。物の値段は上昇し、光熱水費も上昇します。
物価上昇は私たちにとっては大きなデメリットであり「カーボンプライシング反対」と思うかもしれません。
しかし、カーボンプライシングは税収を増やします。集められたお金は、環境対策や再生可能エネルギーに使われ、将来の私たちの生活の役に立っているのです。つまり、カーボンプライシングはお金を適材適所で使う策ともいえるのではないでしょうか。
地域別にみるカーボンプライシングの現状とお金の使い方
カーボンプライシングは世界中で始まっています。ここからは、地域別の現状とカーボンプライシングによって集めたお金の使い方についてお話しします。
北欧
北欧は世界の中でもいち早くカーボンプライシングを導入しています。
フィンランドは1990年に炭素税を世界で初めて導入しました。スウェーデンは1991年に導入しています。スウェーデンは炭素税の税率を段階的に上げつつ、法人税率を下げることで経済成長とのバランスをとることができました。
カーボンプライシングによって集めたお金は国の一般会計に入れて、所得税や法人税の減税に使っています。
北米
北米は面積が広いため、どのカーボンプライシングを導入するかは州の判断に任せられています。
炭素税を導入している州は、徐々に税率を上げて税収を増やし、一般会計に入れることでお金の使い方に柔軟性をもたせています。国や州の財政状況に応じてお金の使い方を考えることができるため、経済発展と環境対策の両立を実現することができています。
世界の先進事例から考える、日本におけるカーボンプライシングのあり方|みずほリサーチ&テクノロジーズ
日本
日本は、外国ほどカーボンプライシングを積極的に取り入れていません。
環境省は2050年カーボンニュートラル実現にむけてカーボンプライシング導入をしたいと思っていますが、経済産業省や経済界は企業に一定の負担を強いるカーボンプライシングに二の足を踏んでいるのが現状です。
日本ではカーボンニュートラルによって得た税収は特別会計になります。省エネ対策や再生可能エネルギーの普及に使われています。
おわりに
最近は、生産からリサイクルまでの温室効果ガス排出量をCO2換算して表示したカーボンフットプリントを目にします。
物を買う時、カーボンフットプリントをチェックしてみるとよりカーボンプライシングの仕組みを身近に感じることができるのではないでしょうか。
地球温暖化は大企業と国だけの問題ではなく、私たちひとり一人が興味をもって考えることが大切です。
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